稲田、円丈の7月12月の2回分
Fireworks3.jで制作した訳!

 この対談は落語2000で演じた各演者の総評をするものだ。しかし決して身内かばいをしない。ストレ−トなダメなものはダメと言うああでもないこうでもない対談である。    三 遊 亭  円 丈

 【メニュウ】
◎7月分だよ〜〜ん!!
◎12月分だよ〜〜〜ん!

      演芸ホ-ルで悪戦苦闘中の円丈! vs      最近、髪を染めた。失恋のせいか?
  三遊亭円丈師匠
なんでアンタのjpgの方がデカイんだ?
   稲田和浩先生
芸人より、作家の方が偉い!当たり前のコトだ

 

7月の落語2000について

 7月下旬。浅草田原町の惣五霊堂(義民佐倉惣五郎を祭るお堂)の狛犬の前で円丈、稲田のあ〜でないこう〜でもない対談がはじまった。
    円 丈


円丈「7月は全体としたらまあまあと思うけど。この惣五霊堂の狛犬の出来と7月例会の出来とどっちが上かしら?」
稲田「モチロン、会の方が上ですよ」
円丈「いや、この江戸原尾立と命名したこの狛犬の方が出来は上です!良い子,良い子(狛犬を撫でる)」

 
いきなりヒシャクで円丈を殴ろうとする稲田先生
稲田「いやいや、まあ、狛犬はこっちにおいといて。話を落語にもどしましょう」
円丈「今回、自分のネタが今ひとつ覚えてなかったんで。あまり仲間の噺が効けなかったんですが。その辺から行きましょうか?前座に上がった快楽亭ブラ談次くんってどうでした」



【7月のブラ談次】


稲田「ブラ談次くんは漫談です」
円丈「えっ、スト−リ−じゃない?う〜〜〜ん、前座の内から漫談で終わる。ダメですね。一番勉強する時期にスト−リ−をいじりながらいろいろ勉強していくんです。漫談なんていつだって誰にだってできる。早い話逃げです!いや、こんどからぜひ、ネタをやるように言いましょう」
稲田「それで前半は師匠のブラックさんのすべって怪我をした話から、病院で常盤貴子似の看護婦に座薬を入れてもらって喜んでいた話から、風俗取材に子供を連れてゆく話。後半は、ブラ談次が前座を務める東洋館で出会った芸人たち、白山雅一や海野つよ志とのエピソード。海野がブラ談次を初代ブラックの弟子だと勘違いしたという話は、不思議なおかしさ」
円丈「でもそれだけで終わったんじゃ。へです!漫談が上手くてそそれからスト-リ−物が上手く作れるようになった奴はしりません。前座の内はとにかくスト-リ−から入るのが王道です。漫談から入るようじゃ伸びようがない!ダメです!それじゃあ」
稲田「そうですようね。それからブラ談次さんはまだ話がつたない。もとが面白いだけに、白山、海野のエピソードの面白さは十分伝わる。前座としてブラ談次しかしらない話を一層観察して、多少の嘘も交えて語れば一つの財産になるでしょう。」
円丈「まあ、彼の芸人部分としてはそうなんでしょうが...。漫談なんぞで前座から受けると伸びないとおもうなあ」

 

【7月の栄助】

稲田「彼は、まあいいでしょう。で二番目に上がった春風亭栄助くんです」
円丈「彼のことは気になってましたが、どうです?」
稲田「高校野球の監督インタビューねたですね。無名校の監督がインタビュー慣れしていないため、とんでもないことを言うという話。ダブルスチールを卑怯と言ったり、試合が終っているのに"これからです""次がある"と言ったり。栄助さんは多分自分の中で面白いと思ったギャグをただつなぎあわせて作ったんじゃないでしょうか」
円丈「私は密かに栄輔くんに期待してるんですが、古典やってて新作をやる時に一番問題はスト−リ−が、どうして作ったら良いのか分からないトコがある訳です。その辺で私は、彼らになにかアドバイスできると思ってんですが、なかなか私のところに電話を掛けて聞いてくれればいいんですが、結構勇気がいるようで。今後はやる前になんかどんなネタなのか聞いて少しでもなんいか参考になるようにしたいですね。いや楽屋のモニタ−から彼の落語が流れてきたのを部分的にしか聞いてないんです。まとまったことは言えないですが、なんて言うのか、古典落語の『大安売り』、弱い力士が出てきてあの日はコレで負けて次の日はこう負けて結局15日間負けつづける。アレの野球版みたいな感じがしたんです」
稲田「全くそうですね!あの噺には、あまり広がりも奥行きも出ません。高校野球で負けチームの監督なら、おとぼけよりも悔しさ、故郷へ帰って何を言われるかとか、球児の人生はどうなるとか、色々言いたいことはあるはずんあですけど」
円丈「新作でとにかく一番大事なものは、スト−リ−をある程度、こねくりまわせる力です。これがないと新作が平板にペタ〜ッとした噺になりますからね。それと栄輔くんで今回,気になったのは、少しギャグがベタねたっぽいことですね。まあ、受けさせようとした結果でしょうが。実はここが肝心なトコなんです。
客に全く分からない落語で全然受けなかった場合。これは演者の勝ちで客の負けなんです!」

 

 
この狛犬への愛が分かるか?と尋ねる円丈
稲田「えっ、そうなんですか?」
円丈「モチロンはいつもこれは100%ではない。まだ奥があると思わせること。とても大事なことなんです。ところが全てベタなギャグでそれがかりに少し受けても。ああ、こいつはこの程度か、客に見切られてしまう。もう大変なマイナスです。ところが意味不明な落語だと100%なぞですから。客は、コンプレックスさえその芸人に抱くのです。芸人はいつもまだ奥がある。そう思わせる部分を持つ、これが必要です。出なければ三平師匠のように100%分かるギャグととてつもない大きな愛で客を包み込みようなやり方しかないですね」

稲田「なる程ねえ」
円丈「まあ、それではこの江戸原尾立には勝てません!義民佐倉惣五郎が、泣いてますね。だから次の神社に行きましょう!この直ぐ近くの三島神社におもしろい渡来系の狛犬がいるんです」
稲田「今日は、対談なのか狛犬巡りか、どっちなんです?」
円丈「モチロン、両方です」
そしてそこから100mほどのところにある三島神社にやってきた。


【7月の立川談生】
稲田「あっ、今度は中華料理屋においてある奴ですね」
円丈「はい、渡来系と呼びましょうね。この可愛い渡来系と立川談生くんの先日の落語とどっちが上です?」
稲田「分かりません。そんなの!まずかれのやった落語『幸福の皇子』のあらすじですが、皇太子が隠居のところへ皇室の仕事は何かという話聞きに行く。すると隠居は北欧の童話「幸福の皇子」の話をする。城の中で何不自由なく暮らしていた皇子は、死んで丘の上に銅像として立てられ、人々は宝石や金箔で飾られた美しい銅像を見て「幸福の皇子」と呼んだ。皇子は丘の上から人々の暮らしを見てはじめて、城の中では知らなかった貧しい人々の暮らしを知る。皇子は南へ帰るのが遅れた燕に、自分の身にまとった宝石や金箔を貧しい人々に届けるよう頼む。冬が来て、宝石や金箔を失った皇子はただの銅の塊となり足元には燕の死骸。市長は醜い皇子の像を捨ててしまう。神様はこの町で一番美しいものは何かと問い、皇子の鉄塊の心臓と燕の死骸を見つけ、一番美しいものとしていつまでもお側に置いた…という話を聞いた皇太子は、自らの身を削っててでも困っている人のために尽くすのが皇子としての役割だと、困っている人を探す。
皇太子は腎臓病患者と会い、腎臓をあげようとするが、自分の体を刻むことにためらい、侍従の背中を割いて腎臓を病人に与える。その後も、侍従のもう一つの腎臓を別の腎臓病患者に与え、肝臓病患者には肝臓を、盲人には目玉をくりぬいて与え、最後には心臓も与え、侍従は五臓六腑を切り刻まれ死ぬ...と言うのがあらすじです!」

 
「あの談生クンに噛みつけ!」
とけしかける稲田先生
円丈「もうあらすじ...と言うより、本題そのものですね。まあ、ブラック.ジョ−クが好きなんだね。こお言う噺が好きな人は自己主張の強いある種のナルシストですね。こう言うブラックジョ−クをやってる私が好きみたいな...。でもそんな落語をやってる談生くんをなんとも思わない。私がいるんだけど。でもこの噺はともかく今後、談生くんが、どう変化して行くか、とても楽しみです」


稲田「そうですが、談生さんは難しいですね。彼の中で、あれでいい、あれがいい、というなら、それは仕方のないことでしょう。ただ、グロとか残虐とかは時流ではないと思う。皇太子と雅子さまの性描写とかは、やりたい気持ちはわすかるがやり過ぎでしょう。アタシはあの二人の性生活はもっと違うと思うけど。そんなことはともかく。展開の運びのうまさや幸福の皇子を今の皇太子の悩みと結び付けるアイディアは十分で、あと、この人は古典の技術的なうまさはありますね。古典やレポーターで活躍の談生が新作になると人間が変わるというのを楽しんでいるのかもしれないけれど、希望的には、古典、レポーター、新作で活躍の談生が時々気が狂うぐらいにしといて欲しい…と思っているのはアタシだけじゃないはず」
円丈「まあ、談生くんの場合、もう少し静かに見守りましょう!でもその落語じゃ、この渡来系の狛犬にはかなわないね。次回期待だね」

 

【7月の三遊亭新潟】

稲田「そのあとの三遊亭新潟くんですが、『田舎者の反乱』…「日本狼がいた」という情報を得たテレビクルー(女性ディレクターと男性カメラマン)が新潟県の道なき山奥へ行く。「日本狼がいた」と言うのは、都会に怨みを持つ老人のながしたデマ。テレビクルーは罠に掛かり、老人に捕われる。老人は若い頃東京で寿司職人の修業をしていたが、「新潟の田舎者」「田舎者の握った寿司が食えるか」と皆に馬鹿にされ挫折した過去があった。その復讐のため、山にトンネルを開け、裏日本の寒気を関東に送り込み、東京を豪雪で困らせようというのだ。都会人は雪の恐ろしさを知らない。多くの家屋が倒壊するだろうと喜ぶ老人。カメラマンは鹿児島出身で、桜島の火山灰に悩まされている故郷を思い、雪に悩む新潟の人々に共感し、老人に協力を申し出る。女性ディレクターは東京出身で田舎者の老人を馬鹿にするが、実は彼女は東京は東京でも三宅島出身だったので、いつしか老人に共感するようになる。これがあらすじです!」
円丈「..で聞き終わった感想はどうです?」
稲田「新潟さんは面白いけど、難しいですね。当人が、マクラでトラウマの話を持ち出すもので、なんか凄いネタかと期待してたんですけど。小手先の面白さのほうへ比重がいっていたみたい。田舎者のドロドロしたものが感じられない。いや、個々のギャグは面白いんだけど」
円丈「う〜〜ん、新潟には大きな期待をしてます。ただ彼はスト−リ−が作れてしまうので。最近ついついスト−リ−をいじり過ぎてしまう。すると本来のテ−マがボケてしまうようなところがあるんですね。それが少し気になります」

稲田「ですから古典落語『松山鏡』とか『勘定板』とたいして変わらない面白さとでもいいましょうか。東京の親子の会話を劇中劇的に挿入するみたいな技は新作派の代表選手らしい技量も存分に見せてくれて、それなりに評価していいネタだとは思うんですが。もう少し本来のテ−マに最後まで添って行くとよかったんですがね」
円丈「この故郷ネタってむずかしいんです。私は名古屋ですから名古屋ネタをやりますが。実は30才ぐらいまで名古屋のことは逆に避けてました。それは。名古屋が嫌いだったんです。それがある年齢になって自分の中にある名古屋性に気がついて許せるようになり、それから高座で話すようになったんです。新潟の場合、私より更に重いものを新潟県に感じていますから。どうしても新潟の噺をしてもついそのテ−マから無意識の内に避けて外のスト−リ−に行くようなところがあります。その辺で少しスト−リ−の中ににげこんだのでは?と言う気がしますね」
稲田「新潟さんに関して先日、ある某新聞記者が「新潟は適当に古典がうまくなったぶん小さくなった」と言ってましたね」
円丈「そいつはY新聞のアレ!」
稲田「いやそこまではいいません。それとある演芸研究家の新潟評ですが新潟の宿屋の仇討ちが馬鹿な面白さだった。゛新作なんていつもいつも凄いネタが作れるわけじゃないんで、ああいう道もいいんじゃないか゛と言ってました」
円丈「しかし古典のパロディなんてヘだ!パロディって言うのは、元を離れて存在できない。それ故におもしろいが結局その程度のものですね。実に下らない意見です。不愉快ですから。近くの黒船神社に行きましょう!」
稲田「また場所をかえるんですか?」
円丈「はい、そこには鶴見の名工飯島吉六の狛犬があります。それを見て気分転換をしましょう!」
...と近くの黒船神社に移動!
円丈「これが吉六の江戸狛犬、いやあ、落語より、狛犬だ!」
稲田「なんの対談なんですか。しかし中々力強い狛犬ですね」

【7月の林家彦いち】
円丈「この吉六狛犬と彦いちくんの落語とどっちが力強かったんですか?」
稲田「そりゃあ、石で作った狛犬の方がチカラ強いでしょうね」
円丈「うん、納得!」

稲田「彼のネタは『マスクマン』…主人公はうだつのあがらないプロレスラー。リストラされるかもしれない彼は会社からマスクマンになるよう言われる。マスクとは、一合升を頭に乗せたお馬鹿スタイルでリングネームも゛一合升烏゛とまどうレスラーだが、マスクをつけて町を歩くと自信に変わり、最後のチャンスに命をかけてリングに上がる」
円丈「彼はこの1年で急激に力をつけてきましたね。今、落語2000で受けるのでは一番ですね」

「おれが黙っていてもこの吉六狛犬が黙ってないぞ!」と円丈

稲田「ええ、彦いちさん、いいですね。順調ですよ。マクラのサミットの話や゛カレーはじめました゛と看板を出した洋服屋の話は馬鹿受けでした。多少まだもたつくところはなくはないのですが、いや、痛快痛快。話のマスクで性格が変わるとか、そういう話はよくある話ですが、落語はそんなに気をてらってもしょうがない。むしろよくある話を説得力持たせて笑いにつなげるからいいんです。そういう技量がついてきたということでしょう。プロレスに小さくこだわらず、駄目レスラーの心情を独白と周辺の人達の会話で綴っていった構成のうまさも光ります」
円丈「そうですね。彼は人間観察落語とも言うべき独自のジャンルを切り開きつつあります。自分のネタを覚えるので精一杯で聞く余裕がなかったんですが、ドッカンドッカン,来てました。そろそろ彦いち追っ掛けが出てくるころでしょうね」
稲田「そうですね。それに彦いちさん自身がマスクマンになったかのようにふっきって突っ走っている面白さが出でました。『山号寺号』はなんか勘違いしてるみたいでしたが」
円丈「さあ、これで今回はおしましだあ!」

 

【7月の三遊亭円丈】
稲田「いえ、まだ円丈さんの分が残ってます!」
円丈「ああ、そうだっけ!どうも自分の話に」弱いもんで!」
稲田「円丈さんの『円生かあちゃん』これも凄いですね。相変わらずの熱演で、名古屋弁の母親が際立つ、そこへ円生を出す緩急のうまさはいいですね。私は別に円丈さんのおかあさんがどういう人かは知りませんが、さもそういう人だったんだろうというイメージをしっかり聞かせる円丈さんの技量は凄いものがあります」
円丈「いやいや、こりゃあどうもどうも!」
稲田「円生の高座を通じて見ているイメージもまたリアルでしたね。もの真似はたいしてうまくない。ただイメージがしっかり伝わる凄さでしょうね。夢話は確かに無理がありますが、無理を逆手にとった発想の勝利でしょうね。マクラの「ねずみ穴」「夢金」の作品評は馬鹿な面白さ。内容的には、私の個人的な問題ですが、私はよく親が夢に出て来る。うまくいかなかったり疲れてたりするとよくあるんで、人に相談すると「呼んでるんじゃないか」とか言われる。そういう意味では怖い噺ですよね」
円丈「いや、ホントのこと、話ますと。実は夢で自分の犬は良く出るんですが、母親も師匠の円生も一度も出てきたことがないんです。実は!」
稲田「えっ、そうなんですか?へええ。でも夢はなんでもありだけに、やりたい放題やって夢でした、と落とすんでなければ、まだまだネタの余地は十分にあるような気がします」
円丈「そうですね。今なら夢の中で見たその出来事。現実に中でもう一度フィ−ドバックさせたホロッとくる癒し系の落語出来そうです。古典落語みたいな最後、夢だったでおとすようなやり方ではダメでしょうけどね」
稲田「今回は、各々が個性的な味を出していたというところでしょうか。円丈、彦いちのパワー炸裂、笑いの量でアベレージ以上だった新潟、我が道を行く談生、次回に期待の栄助…」
円丈「まあ、聞いてなかったんですが、そう言うところでしょうね」
稲田「あと、めくりがないのが、どうなんでしょうか。人形劇で出演者を紹介しているものの当日の番組表もないのは不親切では。アンケートにも「彦一」とか「二番目の人」とか「ブラ房」とか書かれてましたし。めくりかプログラムは必要だと思うのですが」




【でもってこれでおしまい!】

円丈「はい、直します!外の人からも言われました。8月からはめくりが登場します。しかし、飯島吉六の狛犬はいいねえ。私は落語界の飯島吉六になりたい!」
稲田「そりゃあ、どう言う人なんですか?知りませんよ。そんな奴!」
円丈「とにかく今回はこれでおしまし!!じゃあ、うなぎでも食べに行きましょう!」
稲田「賛成〜〜〜っ!」
  
対談後、思わず鳥居を持ち上げる円丈!


◎神社の住所。
(1)最初の宗吾殿。台東区寿3-19-
(2)二番目の三島神社。台東区寿4-9-
(3)最後の黒船神社台東区寿4-3-

田原町の駅から歩いて3-5分のところにある。寄席に行ったついでによるように!ではでは!!


新作落語2000

12月の落語2000
     21日例会. サンタさんの贈り物特集
 いやあ、今回は少なかった。40人チョイ!こんな暮れだからしょうがないけど各出演者は頑張った。
  そこで今回、円丈と稲田は、ああでもない対談に一番ふさわしい場所。上野動物園で話し合った。
  しかし都でやってるのに入園料500円は高い。貧乏な会で計1000円の出費は痛い!石原都知事!500円は高い!百円にしなさい。  三遊亭 円 丈

「どう思う、落語の未来?」
  とゴリラに聞く円丈



円丈「そろそろ1年たつんですけど今回はどうですかね!」
稲田「全体としてそんなに悪くはなかったと私は思います。ただ、今の単に笑いのみに固執する傾向の客には今日の会はどうだったのか。そのへんの客との兼ね合いは大きな課題でしょう」
円丈「そう笑いたがり過ぎるお客さんっていますからね。いやいや、毎回、今回こそ、みんなのネタを聞こうと思うんですが、結局自分のネタが覚えてないので噺のケイコをしてしまうんです。それに今回はろっきぃを連れてきましたから、その世話もあるし..まあ、各芸人のネタにいきましょうか?」

【快楽亭ブラ談次】....『インターネット』  
 パソコンを始めた男が相談に来る。キーボードの練習のし過ぎで自然と指が動くようになり、思ってもいないメールを書いてしまい、あちらこちらを出入り止めになって困っている…というところで絶句して終了!

円丈「なるほどね。そう言うネタですか?で?」
稲田「ブラ談次さんはとりあえず覚えて来てもらわなければはじまりません。いや、きっちり覚えなくても、ストーリーをたどたどしくても最後まで喋って欲しかった。言い方は悪いが、誤魔化すのも芸のうちですね」
円丈「いやあ、あれはうちの犬のろっきぃが、袖で待ってたんですが、舞台に出てって。それを見てお客さんがドッと受けたんで。ブラ談次くんが混乱して噺を忘れたんです。客がどんな反応をするのかと犬を止めなかった!」

稲田「じゃあ、師匠が悪いんです!」

円丈「まあ、そうだけど。でも芸人は、どんな時も途中で降りちゃあまずいですね。私は一度、時間だなくて最後の部分が未完成であがった時もなんとか、なんとかそれらしくラストをつけましたからね。
  やはり稲田さんの言う用に誤魔化してほしかったですね。

「客が少なくてゾ〜オとしました」
  と言う稲田



【川柳つくし】..『占い』(作・稲田和浩)  
 【あらすじ】
最近何をやってもついていない男が占師から「最悪の運勢」と言われる。そんな日に限って雨に降られころんで熱を出したり。あげく、同僚のブスなOLと関係を持ってしまい結婚するはめに。男は運命を呪うが、数年後…。

円丈「で、二ツ目昇進したばかりのつくしくん?」
稲田「つくしさんは、拙作なので、作品に関するコメントは控えさせて頂きます。ただ、ちょっとづつうまくはなってますね。はっきり言葉の強弱がつけられるようになってきたし、小ネタでしっかりと笑いがとれるようになってきたようです。川柳ネタのマクラはポイントを絞って一つで十分でしょう」
円丈「彼女の噺も聞けなかったけど。彼女は声が小さくて細い声で笑いにくかったけど。それが最近、やっとメリハリがついてきて良くなってますね。正直、いくらギャグがおもしろくても声が小さく細いのでは笑えません。これから1〜2年のうちによくなりそうですね。ぜひ大阪の女流新作噺家桂あやめさんをぜひこえてほしいですね」

 

【古今亭錦之輔】...『斬り捨て御免』  
 侍に憧れた青年、椿タン十郎、チョンマゲを結い刀を差して東京へやって来る。チンピラやくざにからまれていた女を助け、チンピラを斬り、暴言をもらした女も斬る。侍ゆえの珍妙な行動が続く。侍の正義感から子供を助けたりもするが、さらに殺戮を繰り返す。

稲田「そう、そうですよ。それで次に上がった錦之輔さんは、おもしろいですね」
円丈「マクラを聞いたのですが、なかなか良い感性をしてて新作向きです。しかも今まででた二ツ目に新人と違い。ここにかける意気込みが全然違います。しかも受けさせてましたね」

稲田「結構、受けてました。マクラで語った自分史が面白いです。『砂の器』を見てから加藤嘉がテレビに出ると必ず涙があふれ出るとか。そうとうこだわる奴なんでしょう。 そうしたこだわりがネタにも出ていて、侍(侍おたくの青年)の行動を、細かにこだわりながら、かなりおかしく語ってました。『斬る』というナンセンスも突き抜けてていいです。
  一つ言えばチンピラを斬った後、もっと女は狼狽するのが普通でしょう。普通の人間の行動と異常な侍との違いをきちんと描ければ、もっといいと思います」

「3里より多いゴリラ!」

円丈「いやあ、言うのは簡単!するのは難しいです。今の彼の段階ならあそこまでやれば、もうカンペキじゃないですかね!まず彼を誉めるべきでしょう。それで清麿さんは?」


【夢月亭清麿】...『恵比寿の街にビルが飛ぶ』  
 恵比寿駅前の駒沢通り沿いに時代遅れのスーパー(雑居店舗)がある。そこらを中心に起こる再開発の話。再開発に反対する花屋を町会長が説得、21世紀にむけた環境型のビルのガーデニングを担当することで花屋は再開発に同意する。恵比寿に大型ビルが出来、花屋のガーデニングも評判でビルはデートスポットとして人気を得る。数年後、東京を大嵐が襲い、大型ビルのインフラ機能が麻痺しビルは廃虚となる。
 ガーデニングのみが一人歩きし出し、東京の数少ない自然地帯ということで、鳥や虫が集まり、いつしかビルは山と化して行く。取り壊す金のない政府は、ビルを宇宙へ飛ばしてしまおうと考える。

稲田「清麿さんが、今回やった『恵比寿の街にビルが飛ぶ』私的にはそうとう好きな話です。もう20年も前ですか、池袋演芸場の深夜寄席で聞きました。客席も大爆笑でしたし、私も大笑いしました」
円丈「あの『恵比寿の街にビルが飛ぶ』と『代々木の三悪』はかれの代表作です。あのリメイク版なんですか?」
稲田「そうです。しかし今回はあまり笑えませんでしたね。後半、地語りが多かったというのもあるかもしれません。あとビルを飛ばす件がちょっと唐突にも思えました。テーマは昔通りでそれ自体は決して古くはなってはいないし、時代の風俗はそれなりに今の時代で作ってあるので違和感はないのですが。昔と違ってそれが恵比寿でなければいけないという決定的な何かがないというのもあるかもしれませんね」
円丈「そうか、ぜひ聞きたかったですね。20年経つと落語は、陳腐になるか、今も使えるか、2通りに別れるんですが。あの噺は陳腐化したんですかね..う〜〜ん!でも自分の耳で一度確かめたいですね」


【モロ師岡】...『俺はゴミじゃない』
   
サラリーマンの小宮山はいつものようにゴミ袋を抱えて家を出る。が、収集日が変わっていて、彼はゴミ袋をさげたまま街を徘徊することに。小心者の男がゴミ袋とたどる運命は。

稲田「モロさんは楽しいですね。あのリアルな小心者の演技、わけのわからない小心者の心のぶつくさ言う叫びがおもしろかったです。すきなく作ってあって、いい色どりだったと思います。また、出て欲しい人の一人ですね」

円丈「いや、はっきり言って今日はモロさんに負けたような気がします」
稲田「いやあ、そんあことはないでしょう?」
円丈「あの日のモロさんのネタは素晴らしいです。小心者のネタですが、それだけでは終わらず、最後は感動にまで高めた!
  あれは名作だと思いますね。モロさんはただものじゃありません!じゃ、なにもんだ?」

「このフラミンゴと今月の客の数、どっちが多い?」円丈

 

【三遊亭円丈】....『藪椿の陰で』
 モップのような毛の巨大犬がある家庭にやって来る。犬をどうしよう、ややうとんじる家族(父母息子)だが、犬はいつしかその家の居候となる。数日後、犬の粗相から、とうとう犬を追い出してしまう。それからというもの家族は犬のことが心配でならない。はり紙をし犬を探す家族。犬が来たから、それまでバラバラだった家族が一つになれたと気付く三人。
 やがて、犬が発見される。大銀杏の下で、息を引き取る寸前の犬と家族の再会。 暮れも近い2000年12月末。

稲田「円丈さんは犬への想いが伝わりました。ちょっと伝わり過ぎたか…」
円丈「そうかなあ..。まだ全然だと思いますけどね」
稲田「その想いが人情話として出て今までの円丈カラーにない話にし上がっていたのでしょうか。状況の描写もいいですし、犬を通じて家族が結び付く件はきちんと泣ける展開です。人情話としてのクオリティはかなり高いと思います」

円丈「あの噺は、あまりにも美し過ぎたのかなと言う気がします。でやった感じは今ひとつだったような反応です。もちろん客席ですすり泣きが聞こえましたが、でもホントにハマッタ瞬間、来た〜〜っと思うんですが、それがなかったですね。どう言う感じなのか?やってる芸人が肌で感じるもので。説明できませんね」
稲田「そう言う感じは我々にはわかりませんね」

円丈「ただ台本の美しさを私が表現し切れていなかった。もう少し円丈らしさがあったほうがと言う気がして。それで『モップ犬』と言う落語に改作してみたんです。悔しいんですよ。ホントにもう。更に2度目の改作をして8割違った落語にします。でも今回の『藪ツバキの中で』はあのまま残そうと思います。私がトリでやったあのネタにやや輝きがなかったのは、やはりモロさんに食われたんだとおもいますね」

 でも次回は必ず勝つ!だって悔しいんだもん! てなことで切り上げ。冬の動物園でビ−ルを飲むふたりであった!お〜〜〜う、さむむむ〜〜っ!
  果たしてこのいきあたりバッタリの対談は次回あるのか?待たれよ!

 

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