清麿、稲田の
   これが6月の落語2000だ!

 円丈です。いやあ、私のミスで6月出られなくなって。いやいや悪かったねえ。北海道にいて様子が全然わからない。そこで清麿、稲田両氏に会の総評をおねがいした。  円 丈 

【稲田氏全体評】
 お客さんは少なかったですね。後で佐藤さんに聞いたところ25名とか。30を切ると辛いですがよく笑うお客さんが多く客席のボルテージは意外と高かったようです。帰り際、若手の落語が好きで「小田原丈さん、とてもよくなったね」などと受付に声を掛けて
対して、皆さん、マクラが馬鹿な面白さでしたね。つくしさんの川柳ネタ、助平さんの新潟ネタは定番として、昇輔さんの二つの選択がある時、自分の応援する方が必ず負けるという話。たとえばソニーのベータのビデオテープや、CSのつぶれちゃったほうのパンフレットとか、そういった製品を紙袋一杯持って来て見せてました。


 【清麿氏全体評】
6月15日の会は観客の入り(最少33人!)を除けば収穫の多いものだった。
梅雨の真っ最中の会だったが、観客の反応や、満足度はそれを吹き飛ばすものだった。アンケ−トの回収率が、異常に高く少ない観客の故に演者により深い親近感を覚えたようだった。
の感想ですが、今回はちょっと手のうちで作っている作品が多かったような気がします。毎月というとどうしても、パターンが決まってくるようなところがあるのかもしれません。


 各出演者出番順で!!


【1.前座川柳つくし】

『なくした宝石』....自作
【あらすじ】
 友達に借りたミレニアムサファイヤのネックレスをうっかりなくしてしまった女、友情はお金には代えられないと、ネックレスを弁償することにする。宝石店に行くと、なくしたネックレスは300万円。女は狼狽し、小ギャルの店長に馬鹿にされたりするが、ネックレスを買うことにする。が、なくしたネックレスは実は30000円のイミテーションだった。
【清麿評】前座つくしは、噺作りが一段と上手くなり、聞く者を意識できるようになっていた。あとは話すテクニック、時にメリハリの付け方が課題と言えよう。
【稲田評】つくしさんは、時間のこととか考えるとしょうがないのかもしれないけど。ちょっと当り前過ぎるネタでした。小ギャルの馬鹿店長のほうをふくらませたら面白くなるかも…。というより宝石店のディテールが足りないですね。


【2.春風亭昇輔】

『はじめての出迎え』
【あらすじ】
 「はじめてのおつかい」のような番組「はじめての出迎え」でキャラクターの濃い少年が駅へ父親を迎えに行く。少年はあっちへつかまりこっちへつかまり、それを追うテレビクルー。少年はピンサロの呼び込みと仲よくなり、ついて行ってしまう。一方の父親、番組とは知らず駅で待っているように言われているが、誰も来ないので待ちくたびれ、贔屓のピンサロへ行く。そこで親子が無事対面となる。
【清麿評】昇輔は、マクラで観客の笑いを充分引き出した。前は空回りすることもあったが、自分のオタク度の強いキャラクタ−に愛嬌を乗せられるようになった。
【稲田評】昇輔さんは、マクラの情けない面白さがどうして噺にいきないんでしょうかね。コアないじめられキャラクターとか、なんかもう一つ、昇輔さんらしさが出ると面白くなるとおもうのですが。



【3.横目家助平】

『肥満小型』....作・中沢信夫(三遊亭演歌)より
【あらすじ】
 ある社長が肥満で悩み医者へ行く。医者は痩せる新薬(赤と白の錠剤)を社長に渡す。夜、社長の夢に美人芸者が出て来て、社長は夢の中とはいえ楽しい思いをし、起きるとすっかりスマートになっている。社長は喜んで、この話を会社で自慢する。アルバイトの男が、自分も夢の中でいいから美人芸者と楽しい思いがしたいと、50キロぐらいしかないのに、痩せたいと医者のもとへ行く。
 医者は新薬(黒い錠剤)を渡す。夜、男の夢には大男が出てきて鉞で男を殺そうとする。怖い思いで目を覚ますと、男は20キロくらいに痩せてしまっている。歩くのもやっとの思いで医者へ行く。「痩せられてよかったね」と言う医者に、男は社長の夢のような美人芸者がなんで出て来ないと怒り、社長の薬と自分の薬は違うのかと聞くと、医者は「社長は社会保険で、あなたのは国民健康保険ですから」
【注意】
 昭和48年頃、創作落語会で円歌師(当時・歌奴)が自作自演したネタ。健康保険と健康保険外の医療行為の差が社会問題になった時代背景から、サゲは社長は薬に大金を払い、後の男は保険で支払ったというオチ。当時は寄席などでも受け、よく演じられたそうです。(大野先生より)。
【清麿評】初参加の助平は、安定した口調の持ち主で新作のメンバ−の中ではかなり古典の臭いを感じさせる。今回の話は円歌師『肥満小型』を元にしたものだったが、会や観客の求めるものとギャップが少々あった。
【稲田評】助平さんは、こういう企画は面白いですね。マニアックと言われてしまえばそれまででしょうが。噺の中の古典的なシチュエーションを語るところは独断場でしょう。

 

【4.夢月亭清麿】

『新宿の川柳』....自作
【あらすじ】
 新宿二丁目のあるバー。一ゲンの初老の客が来る。彼は霊が見え会話が出来ると言い、不幸に死んだ内藤新宿の飯盛女や、惚れた男に殺された若衆の話などを客たちに語って聞かせる。明治初年、このあたりに円朝が住んでいて、円朝に入門したものの落語家になれず不遇のうちに死んだ男の話なども語って聞かせる。
 話のうまさとリアリティで男は人気者になる。内藤新宿を舞台にした話が多いところから「内藤さん」と呼ばれたり、白髪で眼鏡、どことなく川柳川柳に似ているところから「新宿の川柳」とも呼ばれていた。いたずら好きの噺家、清麿が噂を聞き、本ものの川柳を連れて店を訪れる。
【清麿評】清麿は、地元新宿を舞台にした彼が良くやるご当地ネタだ。調べているし、スト−リ−も構成されてて客の評判もそう悪くなかったが「ガア−っとくる手ごたえを感じなかった」と**は言う。
【稲田評】清麿さんは、話の主題に川柳師をもってくるのは、確かに受けるけど、ちょっとずるいですね。ギャグとしてはいいんですけれど、話がそっちへ行っちゃうと「えっ?」っていう気になりますね。受けるとかは別にして、内藤新宿や明治の噺家の生活のディテールを語るあたりは引き込まれるものがあるだけに…。


【5.林家しん平】

『仮面ライダーは今、完全バージョン』....自作
【あらすじ】
 仮面ライダーがもし本当に存在していたらという話。仮面ライダーこと本郷タケシはショッカーと戦った後、デパートのショーやサイン会などで生活していたが、年齢50才の今となってはあまり仕事はない。仕事はないが、正義感と情熱だけはあまりある。ライダーはもう一度ショッカーと戦い自分の存在をアピールしようと、ショッカーの残党を探し歩くが見つからない。
 ふらり入ったラーメン屋、そこは実は生き残ったショッカーの怪人や戦闘員が細々とやっている店だった。ショッカーも仮面ライダーとの戦いに敗れた後は世界制覇をあきらめ、わずかな金を資本に店を開いたのだった。
 もう一度戦おうと言うライダーに戦闘員は、「俺たちは今はラーメン屋なんだからそっとしておいてくれ」と言い、「あんたもヒーローだったプライドなんか捨てて真面目に働いたらどうだ」と逆に諭される。ショッカーに諭されたライダーは流石に考えを改め真面目に働こうとハローワーク(職安)へ行くが50才の元ヒーローに仕事はない。職員に怒られ、とぼとぼ外へ出るライダーの前に一陣の風が吹きすぎる時…。
【清麿評】三度目の結婚の決まったしん平は、そうした私生活の充実が高座に出ていたせいか、いつも以上の派手な陽気モノとなった。ネタは仮面ライダ−を扱っており、いつもながらのしん平らしい話なのだが、観客の好き嫌いが分かれてしまうようだ。
【稲田評】しん平さんは大熱演でしたね。発想の抜群のおかしさといい、仮面ライダーやショッカーのコアなシュチエーションといい、しん平さんらしさがよく出てました。ライダーの熱演、職安の係員の「静かにして下さい」と怒る一般人のセンスとのぶつかりあい、おおいに笑えました。



【6.三遊亭小田原丈..トリ】

『朝鮮のロボット』....自作
【あらすじ】
 世界制覇を企む博士が最強の格闘技ロボットを作る。だが、予算がないため韓国製の部品で作ったため、ロボットは朝鮮語しか話せず、行動がおかしい。キムチをたくさん買ってきて友達だと言う。ロボットは自分を「格闘技ロボット」でなく「カクテキ・ロボット」だと思い込んでいた。
【清麿評】トリの小田原丈は大健闘といえよう。1回からの連続出場であり。今回急に決まったトリであったが、彼が量産できるかなりの話の引き出しの持ち主であることを証明した。この会で一皮向けてきた小田原丈の次なる目標は、演者としてのスケ−ルアップに尽きる。師円丈の持っている迫力や、観客を引っ張り狂気はなかなか真似の出来るものではないが、そろそろそんなものを感じさせて貰いたいと思った。
【稲田評】
 小田原丈さんは何年か前に余興で橘家文吾さんと組んで金正日のもの真似をやった話とか。馬鹿受けでした。
小田原丈さん、小技でお客さんをつかむのがうまくなりましたね。時間が押してたこともあり、短めに駄洒落とナンセンスの小品でさらりと演じたといったところでしょうか。
 途中、河童が出てきたり、ご当人のボキャブラリーが少ないことをネタにしながらの韓国語もなかなか面白く聞かせてもらいました。ここ一番のネタではないのかもしれませんが、こういう小品に技を見せるというのも一つの方向かもしれません。

..と言うことだ。しかし本当のところはどうだったのか?分からない。しかし色んな意見を総合するとみんなマクラは受けていたようだ。あと小田原丈が一皮むけつつあると言うのが、大方の意見だ。
 ココだけの話だけど、小田原丈にはアト1年でモノにならないと...と印どうを渡してある。まあ頑張って貰おう!師匠に対する憎しみでも怒りでも全てプラスのエネルギ−に変えて前進するしかない。行け!小田原丈!いやいやそれより自分自身来月頑張らないと。なんかいいネタない?
  三遊亭 円 丈 


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