初代ロッキ−は、1998年9月に病死。そして二代目ロッキ−は、2000年7月14日に車に轢き逃げされ、翌15日朝8時に一才半弱の短い寿命を終えた。

 2年足らずの間に二頭のロッキ−の死を看取ることになった私。今度のロッキ−の死は、前回より、はるかに悲しいものになった。これはその事故のドキュメント。泣き虫円丈になった私から涙が去って行かない。合掌!
 三遊亭 円丈

死亡後も埋葬するまでこうして血が出てきた。事故に遭わせて、ごめんよ。


 
2000年7月14日--事故当日

夜20:00頃--ロッキ−と5つの公園ジョギング!

 とにかく肥るタイプのロッキ−の減量計画。自転車で5公園2.5kを走らせたが、夏場は息が荒くなるので。自分のトレ-ニングも兼ねて公園と公園の間をジョギングで2.5kを走破。
 まず自宅から300mほどにある六町公園、それから六町三丁目児童公園、六町三丁目の第二児童公園と続く..。
  
これは前日撮った写真。ロッキ−はチンタラ走ってる..。


夜20:15頃--ロッキ−滑り台に3回も登りたがる。

六町三丁目第二児童公園。普段全く興味を示さない滑り台の階段に3回ものぼった。この不思議な行動。あとになってそれは遊び大好きロッキ−の私への別れのあいさつのような気がしてならない。

夜20:25頃--運命の瞬間、首輪が抜け、逃げ出す!!

4つ目の一ツ家第三公園を軽く散歩して。次の一ツ家中央公園まで500m近く走るのだが、交差点で首輪がスポッと抜けてしまった。
冬毛から夏毛になり、首が細くなり抜けやすくなっていた。
ロッキ−は、戻ってきたが、目があった途端。ロッキ−は逃げ出した。その瞬間、目の前が真っ暗になった。

 
夜20:26頃--「あぶない!戻ってこい!」

近くに若い男が二人連れが、犬を捕まえようとしてくれた。だが最近のロッキ−は、しらない人には「ウ〜〜〜ッ!」低い声で唸る。それで怖くなって男たちは、手を出さなかった。
ロッキ−は、逃げ出したものの、どうして良いか分からず少し先の車道の真中にウロウロしていた。
「こら、あぶない!戻ってこい!」と大声で叫んだ。
しかしそれは、逆効果でしかなかった。

夜20:28頃--ロッキ−は完全にパニック!

 それほど交通量の多い道路ではないが、車道の真中に出てジャマなロッキ−にクラクションを鳴る。「こら、もどれ!」と怒鳴ったが、戻る様子はなかった。しかも近づくとロッキ−は逃げる。でもロッキ−自身もどうして良いか分からずパニックになっていた。
 そこでとりあえず車のいない脇道の方に行き。ロッキ−に
「さあ、こっちだ!おいで!」と誘った。
 だが効果がない。もう完全なパニックに陥っている。やがてロッキ−は、交差点の方へ戻って行った。長年恐れていた事故が、濃厚になり始めた。

夜20:31頃--車道の中央を疾走しはじめたロッキ-!

交差点に着いたロッキ−の頭に突然、次の一ツ家第一公園が、頭に浮かんだようだ。いつもは歩道を通るその道!なんと車のいない車道の中央を突然、軽快に一ツ家第一公園を目指して疾走しはじめた。お前は死ぬつもりなのか?
「こらあ、戻〜〜れ!」

夜20:31頃--ガッガツ〜〜ン!と言うもの凄い音で轢かれた

50mほど走ったところで向こうからワゴン車走ってきた。
「あっ、危ない!よけ〜〜ろ!」と叫んだ。車を全く恐れないロッキ−は、いつか車に轢かれるのではと言う思いはついに現実になった。車を恐れるどころか、逆にそのワゴン車をめがけて突っこみ、後輪に巻き込まれた。
「あっ!」

その瞬間。車からもの凄い音がした。
ガッガツ〜〜ン!
あの大きな音を聞いた瞬間、死を覚悟した。最初の「ガツ」は頭を轢かれた音、次の「ガツ〜〜ン」は胴体を轢かれた音だった。ロッキ−は。キャインと言う短い悲鳴を残してバタッと倒れた。
 私の目の前でロッキ−は、勝手に車に飛び込み、轢かれ、そして倒れた。私は、ただこの光景を見ることしかできなかった。ロッキ−が轢かれた。思わず。
「こら〜〜あ、なんてことをするんだ〜〜あ!」と車に駆け寄った。

夜20:31頃--ワゴン車は轢き逃げした!
     ワゴン車は、一旦、スピ−ドを緩めたが、
「まて〜〜、停まれ〜〜〜っ!」
と追っかけたが、ワゴン車はそのまま走り去った。轢き逃げだ。ナンバ−だけでもと目を凝らしたが、老眼と近眼の私の目では、なにも確認できなかった。

【生きたロッキ−と撮った最後(前日)の記念写真。しかし死ぬのなら....】


夜20:33頃--瀕死のロッキ−を殴った!

急いで倒れたロッキ−を抱きかかえ、歩道に連れてきてひとまず置いた。ロッキ−の意識はまだハッキリしてて首を少し上げ私を見たが、その瀕死のロッキ−を殴った。
「バカッ、車は危ないと何度言ったら分かるんだ。信号だっていつも止るようにしてたろ!車の交通量の多いところにわざと連れて行ったりして。交通事故だけは避けられる犬になるように。あんなに一生懸命教えたのに。バカだからこんなことになるのだ!パシッ、パシッ!バカ!バカッ!」
私はもう殴ることを止めることが出来なかった。

夜20:36頃--ロッキ−抱いて800m先の自宅へランニング

私は、その時、小銭もテレカもなかった。もし事故現場近くから電話をして車で迎えに来てもらい、その足で獣医さんに行ければ良いのだが!それができない。自宅まで800mほどある。抱きかかえ一度自宅に帰り、そこから獣医さんのとこに行くしかない。
しかし事故の犬は、なるべく動かさない方がいい。しかし現実には抱きかかえて戻るしかない。まるで今年作った私の新作落語『私犬』ようだ。ぐったりしたロッキ−をを抱きかかえながら。自宅を目指し1分でも早く着くように走り出した。

夜20:43頃--体重15Kのロッキ−を抱き完全に息が上がった。

 しかし体重15Kのぐったりしたロッキ−を抱えながら不恰好に走る。だが55才のおっさんにはきつい。直ぐに息が切れる。100mほど走ってはしゃがみこみ。「大丈夫か?もう少しだぞ。頑張れ!」とロッキ−を励ましながら走る。
 途中セブンイレブンがあった。良くカラ−コピ−で利用してる店だ。訳をはなして電話をかけさせて貰おうか。とも考えたが性格でどうも人に物を頼めない性格。あと300mだ。それより走ろう!必死に走っているつもりだが、もう完全に息が上がり、傍目には、早足程度だったろう。

 私は、このわがままなロッキ−が疎ましかった。何度言って覚えないこの犬が嫌いだった。人とすれ違った時、唸るなとその都度注意するのに実際には逆にドンドン吠えるようになっている。私はそんなロッキ−がどうにも許せなかった。
 でもロッキ-は私が、嫌がってることを知っていたと思う。そのわがままなロッキ−が私に出来るたったひとつの飼い主孝行、それは死ぬこと。そうかも知れない。
「おい、ロッキ−!そうなのか?バカヤロ-!そんな孝行ありかよ!そんなのなしだぞ。ロッキ−!バカヤロウ。そんな悲しいエンディングがあるか。死なないでくれ〜〜ッ!」

 
夜20:50頃--自宅で女房を叩いた。ごめん!

うち入り玄関の小さなジュウタンにロッキ−を寝かせ、
「ロッキ−が車に轢かれたああ!」
血相を変えた女房は
「なんでそんな車のいるとこに連れていったのよ!」となじった。
 おもわず被ってる帽子で女房をひっぱたいた。
「おれは、ロッキ−が車に慣れさせるためにいろんなとこに連れていってたんだ!うるさい!」
いや、女房にはホントに申し訳ないことをしたと思ってる。
「医者に電話しろ!」
ロッキ−は立てなかったが思ったより、元気だったとも言える。でも助かるのか?死ぬのか?見当もつかなかった。いつも行ってる獣医さんが、見てくれることなった。

夜21:05頃--獣医さんは「一晩預かりましょう!」

 ぐったりしたロッキ−を獣医さんの診察台においた。まず事故のショックで心臓麻痺で死ぬ犬がいるとかでその注射を1本うち、いろいろロッキ−を触りながら。
「足は全部大丈夫ですよ。内臓は押しても痛がりませんから大丈夫でしょう。とにかく今夜一晩預かった様子を見ましょう!」
「そうですか?」

そして奥の部屋にロッキ−を大事そうに連れていった。だがこれが生きてるロッキ−との最後のお別れになってしまった。

夜22:00頃--ロッキ−死んだ時の悲しみは?

それほど獣医さんが、悲観的な見解ではなかったので。少し安心した。ひとりになってもし死んだら女房のショックはデカイだろうなと思った。しかし実際死んでみたら、死に関わった私の方が、そのショックや、悲しみは女房の何倍も大きかった。

深 夜--だれもいないのにドアがバタン!バタン!

 
   その夜、風のせいだろうが、居間のドアや、トイレのドアが、4.5回、バタンと音をたてた。
 私には、あのロッキ−の魂が戻ってきたように思えた。そしていつもなら先にロッキ−が寝てる筈の寝室にひとりで寝た。

【ロッキ−が永遠に食べ残したエサ。小さい粒は鯉のエサ。こっちの方が好きだった】



 
2000年7月15日--ロッキ−が死んだ日

 
朝8:00頃--女房「ロッキ−が血を吐いたんだって..!」

寝ていたら突然女房が室に入ってきて起こされた。
「ロッキ−の血を吐いて容態が良くないんだって!」
「えっ!」
「コレから先生のトコに行くけど!来る?」
「うん!」
もうロッキ−は助からないだろう。私は出かける仕度をしてる時、不覚にも涙があふれ出た。
それほど泣く人間ではない。しかしなぜか今度のロッキ−には涙が止らない。

朝8:30頃--間に合わなかったロッキ−の死!
 急いで診察室に入ったら。ロッキ−は、すでにこと切れていた。「10分ほど前に亡くなりました!」
ロッキ−に触ったが、既に足は冷たくなっていた。

 ホントはもう少し前に死亡したのではと思ったほどだ。「今朝7時頃、大量に血を吐いてから急に息が荒くなり容態が急変しました」

ロッキ−の最後を看取ってやりたかった。:【獣医さんのトコにて】

 結局、先生ただ様子を見てただけだったんだ。
「で先生はあれからどんな治療をロッキ−に施してくれたんですか?」
と口まで出かかったがやめた。

 ロッキ−は肺をやられ、血が溜まった。それなら早めに胸を切開して治療すれば助かったのでは?今回のロッキ−ではすべてが死の方向へ動いた。そしてそれは運命だったとも言える。

朝8:50頃--死んだロッキ−を叩いた
 先生の家をあとにした。冷たくなったロッキ−を抱えて。表に出た時、死んだロッキ−を軽く殴った。
「お前はホントにバカなんだから!バカッ!」
その瞬間、それまで堪えていた感情が一気にふきだし。どうにも涙を止めることが出来なかった。年のせいで涙腺が緩んだのか?

死んで帰宅したロッキ−。おかえり!

 そして女房は
「どうせ死ぬのなら家で死なせてやりたかった」と泣いた。

朝9:05頃--長男に電話!そして簡単な祭壇作り...

帰ってきて女房は栃木にいる長男有司に電話した!それから初代ロッキ−と同じように有り合わせの手作り祭壇。扇風機のダンボ−ルにシ-ツを掛け、祭壇にしたが全然、様にならない。私は、ロッキ−を乱暴に撫で「お前は死ぬのが下手なんだ。だから死ぬ時もひとりで死んだし、死んでも全然、様にならないんだ。バカッ!」
また泣いてしまった。
朝10:00頃--弟子の天どんがきた
今日は10時に弟子の天どんが来る日。驚いた天どんは、死んだロッキ−に手を合わせていた。そして私は、ロッキ−の首輪を外した。死んだロッキ−になんの意味があるんだろう。
しかも肝心な時はスポッと抜け、ロッキ−を救ってくれなかったその首輪を外し、祭壇に置いた。

【神妙に手を合わせる弟子天どん】

女房は、「健康のために食べるものを制限してたけど。こんなに早く死ぬのがわかっていたら。なんでも食べさせて上げれば良かった」と女房は泣いた。
朝10:30頃--長男有司くる

有司がきた。その目は真っ赤だった。どうやら泣いていたようだ。長男有司は栃木に住んでいて。今までにこのロッキ−とは、数回しか会っていない。しかしなぜかロッキ−は有司に対して特別な感情を持っているようだ。有司が出ていく時だけ、激しくあとを追う。どうも兄弟のようなそんな感情を抱いてるようだ。
 ロッキ−をどうするか?相談した。女房は焼く方を希望したが、初代を庭に埋めたなら二代目も同じにしないといけないだろうと言うと納得して。初代ロッキ−の直ぐ隣に今度のロッキ−も埋めることにした。
朝11:00頃--3人で墓掘りはじめる

私と長男と天どんの3人で墓掘りを開始した。35cm以上掘るとこの庭はガレキがでてくる。しかも最低でも60cmの深さは必要。そこで少し深目に掘り、ガレキを丹念に取り除いて。そこに腐葉土と赤玉土を混ぜて。少しでもいい土に埋めてやることした。


昼13:00頃--墓掘り完了
 すこし広く掘りすぎたら、初代ロッキ−の一部がでてきた。ギエッ!天どんは薄気味悪がったが、私は平気だった。なぜならこのロッキ−の墓守りだから。
 二年前のロッキ−は、完全に骨と毛だけになっていた。それでも1時には墓掘り終了!もちろん、初代ロッキ−の遺骨はもう一度埋め戻した。

【犬1頭でもこのぐらいは掘らないと。手前がガレキ!】


夕方17:00頃--埋葬...2頭のロッキ−は並んで埋められた

長女亜津子が戻ってきた。亜津子も泣いた。女房が「亜津子がかえって来るよ!」とロッキ−に言うと玄関近くの網戸のところへ行き、じっと待っていた。そんな一面もあるロッキ−だった。

家族が揃ってから。ロッキ−と最後のお別れをして、前と同じようにシ−ツでロッキ-をくるんだ。しかし今度のロッキ−は死後硬直があまり起こらず。グニャグニャの死体。穴に入れ、そこにロッキ−の首輪、エサ、花を入れ、さよならロッキ−!土を掛けた。

そして墓守である私は長靴を履いて
「ロッキ−、少し苦しいけどごめんよ!」と言いながら有司の掛ける土を一生懸命。ふんずけた。コレをしないとあとでこの地面がへこんでしまう。

 
夕方17:25頃--線香、水、焼き鳥は2頭分供えた
 それから石の少しずらし再び敷き石を置きなおし、線香、水、焼き鳥をそれぞれ2頭分。
 こうしないと中で喧嘩するかもしれないから。
「ロッキ−達よ。私に楽しい思い出をありがとう!」
そして2頭に手を合わせた。

【埋める直前、どんな顔か見たくて最後に写したロッキ−の顔。穏やかだ。良かった。死なせてゴメン。ロッキ−!】
  

 


 こうしてロッキ−の葬儀は終わったが、私の悲しみは、更に続き、当分終わりそうにもない。
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