落語作り方教室

 講師 三遊亭 円 丈

 新作落語の作り方のプロといえば私、円丈なのだ。30年以上も前、既に日本ボールペン・クラブと言う新作落語を作る会を主宰し、また10年ほど前にも「落語作り方講座」と言うのも主宰し、さらに噺家の仲間にも新作落語の作り方を教えつづけきた。
  そして円丈自身も300本近くの新作落語を作り、中に「グリコ少年」愛と感動の落語「横松和平」、「作家地獄」、 「悲しみ造りは埼玉に向けて」(今月発売の雑誌『笑芸人』に掲載)などがある。だから教えても良いよね。  円丈
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◎こうすれば応募台本入賞確立がグーンとアップ
◎新作落語の作り方(まだ半分しか出来てないので・)



  第1回
 こうすれば応募落語台本の入賞確率がグーンとアップする


 落語協会の募集台本まだ間に合うよ

 現在落語協会では新作台本を募集中(締め切り04年5月31日まで)でドンドン来ている。
目下、噺家が、20人ほどでセッセと読んで審査してる最中。 しかし正直まず作品以前の問題があまりにも多い。
読みにくい台本が多すぎる。まず他人が読むことを充分、頭に入れて作らなければならない。そして書いてるアンタは、
書き手でだから、全て分かって書いていてもそれが、説明不足で読む側は「なんだ、こりゃあ?訳分からん」となる。
いつも読み手にホント、意図することが分かるかと考えながら、読む方だって人間なのだ。そんな台本は、悲しいかな。
落選の憂き目に会うことが多い。そこでまずどうしたら審査員が、読みやすい台本作れるか?それを伝授しよう。
これを読んで実践すれば、パスする率が、グーンとアップする。さあ、直ぐ書いて応募しよう。   三遊亭 円 丈


1・セリフのカギ・カッコには話す人物名、そしてト書きも書くべし!
これも台本を応募する時のイロハのイだね。最近、これを書かないものが多いが、絶対書くべし。
まず読む方に分からせるのが、絶対条件、にする為にはあった方が良いに決まってる。

 『金融道イブ』 04/11/10ネタおろし、04/04/29改作 三遊亭円丈
  ・・・・最初の・・・・・・・
 盛り場近くの住宅地をクリスマス・イブの夜、柄の悪そうな 2人組の男がセカセカと歩いていた。
助手「兄貴、兄貴・・兄貴・・ねえ。闇金の兄貴!」
男 「シッ、大きな声を出すな。・・おれは、闇金じゃねえ。高利貸しだ」
助手「同じじゃないすか?」
男 「全然違う。いいか、闇金は人間のクズのやる仕事で高利貸しは、選ばれた男の仕事だ」
助手「・でどう違うんです?」
男 「全部違う。俺はなあ。葛飾亀有で代々続く高利貸し。金貸しの亀金だ!のれんが違うのよ。しかも創業が安政 5年で上野鈴本と同じ創業なんだ」
助手「えっ、そりゃ、すごいっすね。でも法外な利子を取って違法じゃないすか?」
男 「やかましい。うちは規定以上の利子は取ってねえ。それ以上の分はお車代、ご祝儀として貰ってる」
助手「芸人すよ。それじゃ、ねえ、兄貴!」
   ・・・・・(つづく)・・・・・・・

 以上は円丈の書いた台本。別にこのために丁寧に書いた訳じゃなく、普段からこう言う書き方をしてる訳なんだね。
最初の“盛り場近くの住宅地を・・”この部分も落語の台本で書かない人が多いけど、書いたほうが良い。状況が良く分かるし、
 それからシーンの変りにも必ずト書きを入れよう。
シーンの変りを知らずに読んでるとストーリー自体が、分からなくて混乱する。すると審査員は「こんなのボツ」と落としてしまう。
また演者の方でそのト書きが要らないと思えば、演る時に取るだけのことだから。


2・作ってるアンタは分かっても読む方は全然分からん
  落語を作って最初の勘違いは、書いてるオレが分かるんだから、読む方も分かるだろうと言うことだね。
そりゃ、作ってる本人は、分かって作ってるから分かる。でも読み手は、分かって読んでない。分からずに読んでる。
だから他人の台本ほど読むにくいものはない。自分が分かっているから相手もわかるだろう。これがとんでもない誤解!
 だから誰が読んでも分かる台本を書く、分かり易く親切に書く。これがコツ!

3・ストーリーがなくグチみたいなものは絶対落ちる
  内容的にストーリ−がなく漫談で、しかも自分のグチみたいな内容が時々あるけど100%ボツ!ボツになることを保証します。
でもそんな台本はないだろ?いやあ、残念ながらあるんだね。もう読んでて、イライラしてくる。
 落語台本に自分のグチを書いてストレスを発散!そんな台本だけは、絶対送らないで読む方が倍のストレスが溜まるから勘弁して!

4・シモネタは殆ど不採用だと思え!
  大体、応募台本の1割ほどこのシモネタ。でも公言するけど、シモネタは出すだけ無駄。採用される率は極めて低い。
シモネタなんてやっても今のお客さんは引くだけなので採用されない。これはどこに出しても同じだと思う。 郵送費が無題になるので、
回りに友人に聞かせる程度で終わらせて、送って来ないで!読むのがつらい。

5・古典のパクリは通らない
  パロディとパクリとは違う。設定が少し違うだけで古典と同じネタ。そんなの金を払って採用するわけがないだろ。
中には古典数本をパクって平然と送ってくるケースがあるけどその場で不採用だね。古典だから法的には問題にならないだけで、
もしこれが個人の作品なら著作権問題にもなるから、パクリだけはやめましょう。

6・難しい言葉は使わない
  落語では難しい言葉は使わないようにしよう。誰でもわかるようなやさしい言葉が良いね。しかも落語協会で審査するのは
全員噺家なので余計難しい言葉は使わないこと。噺家はバカばっかだからね。
  ただネタとして難しい言葉を使う。これはありだよ。 なんせネタで使うんだから。でもそれ以外は、とにかく平易な言葉で
さくさく読める台本はパスする率が、アップするのは間違いない。


7・台本を書き上げてから必ず読み返してチェックしよう
  ホントの最低限の最低限。このぐらいのチェックは絶対必要だね。でも実際、これすらしてない台本が過半数ではないだろうか。
まず書いてる本人が自分の台本を読み返して理解できるコト!もし出来なかったら、その台本は世界で理解できる者はいないね。
審査をパスすることは難しい。もうボツ!送るだけ無駄です。

8・無駄な言葉を排除して簡潔にしてやさしい文章にする
 文章って結構、人のよって癖があるし、また無駄も多い。それで見直して余計な言葉や、無駄な繰り返しなどをカットして徹底的にシェイプアップする。
プロは10回、アマでも3回ぐらいの見直しはしたい。できればワープロで打つことを勧めます。原稿に手書だと、書き直しがとても面倒なので
ついそのままに上げてしまう。えっ、ワープロが上手く打てない?覚えなさい!


9・送る前に誰かに見てもらおう!
 円丈はネタ下ろしの落語台本は、必ず友人、仲間、お弟子さんなどに見て貰う。しかも必ず複数の人に!一人だと評価が、偏ることがある。
それでその意見を聞いて!
それから書き直しを10回ほどして再度、見て貰う。大体、完成した作品はそこそこのレベルまで行く。そしてそのネタを演じてスコーンと外す
なんてことも良くある。 実は落語を作るってことは、小説なんぞより、実ははるかに難しい。



10・テーマをあらかじめ書いておく
 とにかく台本は読む身になって親切に書く!そしてその台本に4-5行で良いから、軽いテーマとか、あらすじをつけておけば万全。
これでネタに少し見所があれば一次審査をパスすること間違いなし。いやあ、おめでとう。これで君も落語作家だ!

◎次回は「具体的な新作落語の作り方」をする予定・・あくまでも予定!




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