〜2002年円丈はどんなネタ下ろし、改作をしたのか?〜
 円丈は、70歳までならなんとか、作り続ける自信がある。そのためにはいつも普段からネタを作って訓練しておかないと。そこで一体円丈は、最近どんなネタを作ったり、改作しているのか。それをここで公開することした。04年度版としてここに落語ネタ下ろし報告!  三遊亭 円 丈




『演芸ホール2004』 作 三遊亭円丈 以前の『落語界1995』の改作
    04/01/05・・プーク人形劇場らくごちゃん特別公演

 【あらすじ・・以前のネタの改作】
  元々、この噺は1995年、オ−ムが地下鉄サリン事件を起こし、浅原が捕まる直前ぐらいに作った作品。舞台は上野鈴本になっていて、突然、落語界のお客さんが笑わなくなってしまう。実は上野の鈴本の社長に浅原が化けていて、その浅原と対決すると言う少し落語ファンタジーっぽい作品「落語界1995」。
  しかし今となっては、古くなっているが、結構笑えそうな部分があるので、浅原を全てカットし、舞台も上野から浅草に変更して『演芸ホール2004』と言うタイトルを付けた。演じた。

【やってみて!・・そこそこのウケ方】
 この噺の山場は、エレベーター下り、社長室までの通路にコブラが、放し飼いにされ、その通路にこん平さんや、木久蔵さんなど、先輩たちが、倒れて死んでるとこを進んでいく場面。まあ、この手の噺は、マニアックな落語ファンに受けそうだが、その通り、受けた!その後、3月31日新宿落語サミットでもやったが、この時もそこそこのウケ方。
でも同じ寄席を舞台にしたのでは、名古屋大須演芸場を舞台にしたドキュメンタリー落語『悲しみの大須』があるが、やはり受け方、感動ともにこの『悲しみ大須』の方が上だね。大須ネタはドキョメントだし、この噺はフィクションなんだ。もう少し手直し出来そうだけど、作品のレベル自体はこれ以上上げられないネタだね。


 

『お笑い遺伝子診断』 作 三遊亭円丈 
    04/03/12・・プーク人形劇場小らくごちゃん用に作る

 【あらすじ・・お笑い大好き夫婦の噺】
  実はこのネタは、2〜3年前から考えていたネタ。今回、軽い一席にした。あるお笑い大好き夫婦、子供が出来て、その子が、発病性のある遺伝子を持っていないかと、病院に診断結果を聞き行くとその子は、発病性のある遺伝子は一切発見されなかった。しかし
6895番遺伝子Tが欠損し、これはギャグの理解力を司る遺伝子。それがない!つまりギャグが理解できない。
  更に10222番遺伝子。これはダジャレに対する感受性の遺伝子。通常Aがひとつだが、その子はAAA!つまりダジャレだけアリコジャパンで大笑いし、その上 10223 番遺伝子。これは下ネタに関する遺伝子でこれまたトリプル A !下ネタを言うとヒックリ返って笑うと言う。それからこのお笑い大好き夫婦は、
「あんた、ホントはギャグが分からないでしょう?」
「そういうお前こそ、シモネタだけは大笑いするだろ?」
  ・・ とののしり合って大騒ぎになるごく軽い噺。

 【やってみて・・そこそこウケル】
  終わってから舞台の袖で聞いていた白鳥くんは「いや、これは寄席でやっても充分受けますよ」と言われた。 大体、ネタ下ろしって自分の思っていたより、やや笑いが少ないのが普通だけど、このネタは思ったより、ウケタ。このお笑い大好き夫婦と言う設定が、落語会のお客さんから見るととても身近で笑い易いネタだったからだと思うね。まあ、まあの反応だった。

  【白鳥くんに「寄席でも充分受けますよ!」といわれた】
  新作の落語会で受けて、寄席でやるとズコーンとそれるのは、もう毎度のこと。しかしなんとか寄席でも受けるようにしたいと思っているから「寄席でウケます」って言われるとうれしい。
  ところが今まで寄席でも受けますと随分言われたネタがあったけどやるとズコーン!とそれる。だからあまり当てにならない。でもこのネタは、もう少し笑い易いギャグを入れて、寄席でやってみようとと思ってる。新作もキチンと受けるようになるまでには、3.4回の手直しは必要だね。近々、このネタをやるぞ!


『立ち入り禁止』 作 三遊亭円丈 
     04/04/16・・国立演芸場「」井上寄席にて初演

 【あらすじ・・禁止看板を見ると破りたくなる男の噺】
  実はこの1ヶ月ほど前、町を歩いていると或る建物の前に鎖が掛けられ立ち入り禁止の看板があった。そこで禁止看板を見るとどうしても入ってしまう男の噺としてこれを作る。
  男はある古ぼけた4階建てビルの前に足を止めた。
「立入禁止。立入禁止・・いや、これは見なかったことにして通り過ぎよう。・・・で行くと思ったら大間違いだ。・・立入禁止?禁止?このオレに禁止だあ。おれは禁止されると入りたくなるんだ。それなのに禁止?しかも関係者以外立入禁止、関係者以外の俺は入りたくてうずうずするんだ。この立て札を立てた生意気な関係者は誰なんだ。さあ、入るぞ。・・・」
  そして中に入って行く。その中には・・。と言う噺。最後までストーリーを読ませない展開、ラストのサゲでは一応ああ、なるほどと思う筈。何人かに読んでも貰ったが、評判は良い。さ、これをやるぞ!

 【やってみて・・ダメだ、殆どウケない!!】
 この井上寄席と言うのはある劇団を主宰してる井上さんと金原亭世之介さんがやってる。井上氏が脚本を書き、役者さんがそれを演ずる。お客さんも普段の寄席とはやや違うお客さん。
  マクラは、いつものでこれは受けた。しかしネタに入る!途端に受けなくなった。主人公が、一人語りでどんどんビルの上を目指して進んで行く。それがそもそも不安のようだ。そして2階にはホームレスが出てくるけど、しかしホームレスって言葉で引いた感じがする。まあ、何箇所かはウケたけど、まあ、全然ダメな部類に入るね。

  【終わってから・・悔しい、少し変えてもう1回やってみっか?】
  どうも独り語りって言うのが、盛り上がりに掛ける。去年11月初演の「金融道イブ」も最初のシーンが独り語りだけど、どうも受けないので2人に戻した。脚本上は、1人の方がすっきりしてもやる時はそれがベストにならないことが、この落語の難しいところだね。一度、2人でビルに入る2人バージョンに直してやってみようと思ってる。しかしこの噺、基本的に内容的には、一度噺のスジを知ってしまうと次におもしろいのか?と言う問題がある。ややスリリングな噺だけど、それ以上のなにかとなると・・難しい。だからしばらくは寝かしておいてからもう一度、読み直してどうすのか決めようと思う。いやいや、落語って難しい!!



最後のリメイク!『わたし犬』 作 三遊亭円丈 
       04/04/20・東京落語会・イイノホール(NHK「日本の話芸」で録音)

 【あらすじ・・最後のリメイク、ラスト部分の改作】
  この噺、もう5年ほど前の初演なので、別にここに入れる必要もない。しかし、1本の新作が、キチンとうけるようになるには、何度かの改作が必要になる。

 【初演「わたし犬」(1999渋谷ジァンジァン・円丈百番勝負にて)】
 
やや卑屈な酒癖の悪い男、また他の客に絡んで、店を追い出されてしまう。狭いビルの隙間に入って立ションをすると汚い野良犬が寝てた。裏表のあるいやな性格の犬で、見せた男の財布を加えて、離さないなので思わず蹴飛ばして大怪我させてしまう。やがて男は、その犬が、自分と性格もそっくりと気が付き、「こいつはおれなんだ。オレが死んでしまう」と大急ぎで犬を抱え獣医の元にしかし、その獣医は、さっき居酒屋で首を絞めた男。で追い出される。しかし犬は、心臓の鼓動が早くなり、完全な危篤状態になり、
「 俺たちは誰からも愛されず、みんなからバカにされて生きてきたんだ。でも俺はお前を見捨てないぞ。だってお前は俺なんだ。俺が俺を愛さなければ誰が俺を愛してくれるんだ。だからおれはお前を見捨てない。必ず別な獣医を探して助けてやるぞ。だから死なないでくれ〜〜ッ! 」と夜の街を泣きながら駆け出す。・・・そして悲しい犬の死。前半は笑わせて、後半からじょじょに悲しくなって行く。円丈の代表作になれる作品。

  【初演と二度めの時の問題点】
  前半の居酒屋で男が、ウジウジ言って他の客の絡むシーンが受けない!この前半で受けないと話が重くなってしまう。そしてラスト、犬が死んでそのまま終わると暗いなり過ぎて救いがない。
 【改良点前半の笑い不足と悲しすぎるラスト】
  前半居酒屋の中でこの中のギャクを変えて、また新たに弟子天どんのアイデア、カップルを登場させる!これにうだうだ言う。そしてラストで死んだ犬を抱えてとぼとぼ歩いているとその死んだ犬と同じ柄の子犬に出会い。その犬と一緒に夜の街に消えていくシーンを追加する。

 【これも03年11月の独演会でやる】
  ここで初めて前半が受ける。またカウンターの隣で飲んでるおやじの首を絞めるシーンも仕草もシッカリと演じたら受けた。後半は締まり、良かった。ただもうひとつの問題は、感情は入りすぎて、声のコントロールが出来ない。しかも後半少し締める過ぎる。

【ラストのリメイク・・後半を軽くする】
 この犬を抱えてから、犬が死ぬまで、どうしても重くなるので、少しカットして、意識的にやや軽め目に演じることした。
【ラスト・リメリクは?・・ウケはやや少ないが全体としては納得】
  これを東京落語会でやる。ややお客さんは、高い分、前半の受けは今ひとつだが、それはしょうがない。後半カットした分スッキリし、また声のコントロールも出来。ラスト同じ柄の子犬が出てきて意地悪く{う〜〜っ」「なんだお前、性格まで同じじゃないか?」では笑いが起こった。終わって時、新作落語の支持者、大野桂先生が「いやあ、これは力作だよ。思わずホロッと来ちゃった」と言ってくれた。全体から言えばもう少し笑いが欲しかったところだが、全体的には納得の出来だった。

  ◎04年6月12日(土)NHK教育テレビ14:15〜6月13日(日)NHK総合テレビ朝5時ごろから
   「日本の話芸」で円丈「わたし犬」オンエア予定だから聞いてチョウダイ!

『金融道イブ』 作 三遊亭円丈 
     04/04/29・・円丈還暦前夜祭:池袋演芸場にて

  【あらすじ・・円丈3回目のリベンジ改作】
  この噺、初演はまずまずだったが、二度目に亜郎の会でやったが受けなかった。勿論聞き込んだ感じはあったけど笑いがない。落語は、笑いが基本だ。それがない。う〜〜〜ん、も〜う、悔しい!この噺は、ここで消えるようなネタじゃない。絶対に残る噺。リベンジだ!そこで改作する。
 
【「金融道イブ」あらすじ:初演03年11月新宿プークにて】
  イブの夜、盛り場近くの住宅地を闇金が、取立てに歩いていた。すると自分縄張りを荒らす関西の闇金、いつもじゃがりこを食べるじゃがりこの田島が現れる。ある取立てでは、田島の先手を取られ、客を連れて行こうとするところに乗り込んで客を助ける。しかし男は、闇金が客に情けを掛けたこと深く反省する、やがてあるマンションの前で田島が、ジャガリコを食べていた。実は田島は、暴力団金融から融資を受け、穴を開け、海外に逃げようとしていた。そしてここに田島の別れた奥さんと子供がいて、最後のクリスマ・プレゼントを届けに来た、しかし、散々暴力を振るった田島の顔を見ると震えだすと言う。
「わては子供恐がらしとうはない。喜ばせたい。あんた、届けてくれはいまっか?」と頼まれ、田島はただ一度だえk喜んでくれた紙飛行機をと手紙意の入った袋を男に託す、だが荷物だけ受け取って、子供の顔を見られなかった追い返された。
それを知り、
「ああ、さみしいイブやなあ、雪も降らん、月もでとらん」
そこにヒュ〜〜ッ、紙ヒコーキが飛んできてそこには「パパありがとう」と書いてあった。
  見るとマンションのベランダに雄一が・・。
「雄一、パパやで〜っ」
その後、男は「じゃがりこでカンパーイ!メリー・クリスマス」
二人の闇金は、じゃがりこを「シャリシャリ、シャンシャンシャン・・」とまるでじゃがりこを齧る音は、サンタの鈴の音のように夜の街に静かに響いた・・。

 【これをリメイク・・最初の部分を二人にする】
 最初の取立てに行くシーンを二人にした。実は元々、助手と二人で取り立てに出かけるシナリオだったのが、スッキリするとので一人で行き、それを二人に戻した。しかし、以前とは会話は殆ど、違っている。
  しかしこの噺は、普通の落語から見ると仕込みも多くシナリオも複雑で長い。マクラも入れると40分近くになりそう。これでもなるべく削除して40分!本編も多少短く省略しよう。

 【この噺は演ずるのが難しいのだ!】
 この噺は、演ずるのが結構難しい。
 ◎じゃがりこの音の使い分け。シーンよって食べ方が違う。
 ◎携帯の取り分け!・・浪花の田島は、7〜8個の携帯を使い分けていろんな妖しげな仕事をしてる。
  それを「あ れ、どれや・・」と言いながら携帯を使い分ける。
 ◎しかも々関西弁でも仕事によって喋り方が違う。結構むずかしい。
 ◎それにラストのシャリシャリシャリ・・がだんだん鈴の音になって行く・・これがなかなか上手く行かない。

  【やってみて・・多少の不満もあるけどまあまあかね】
  この日、来たお客さんは、50才以下が殆どで、若い分だけ、笑うポイントが違う。実は切ろうとしたギャクや、省略しようとギャグの方が受けた。これが果たして今後もそうなのか?分からない。
  携帯の使い分けではひとつ抜かしね。でも誰もわからないだろうね。それにラストのシャリシャリも良くなかった。でも全体から言えば、3回目と言うにに覚えるのに40時間は掛かった。この噺は個人的にとても好きな噺の1本。今後も少しでも直しながらやり続けたい。


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