円丈トリ.シリ−ズ
〜これがリクエスト落語の真実だ〜

円丈リクエスト落語控え日記
       〜池袋演芸場2001年3月21〜30日〜
 2001年3月下旬池袋演芸場でネタを14本を並べてリクエスト落語をやった。しかしホントにすぐできるのは3〜4本!ゲッ。ホントにできるのか? ここでの高座を落語コレクションCD用に録音した。
  < リクエストルール>
1)リクエストと何本でも取る
2)拍手の一番多いのをやる
3)覚えてないネタは断れる
4)一度やったネタはやらない 以上!!

     三遊亭 円 丈
     
 (これはやらないと指差す円丈)
 


  大入り叶う...そんなに大入りでもないけど。
池袋リクエスト10日間(2001/3/21〜30)
 リクエスト落語!中年になって覚えた新作はやった翌日もう忘れている。しかもドンドン、噺は変えて行く。高座以外ははひたすらケイコの毎日。落語三昧の日々、とても毎日楽しかった。今後もリクエストはチャンスが会ったらやるぞ!(円丈)

21日休み22日休み --どうもスンマセン!!


  【3月23日のリクエスト....『悲しみの大須』円丈完勝】
 【その日のお客さん】..30人弱
 この日はやった感じではそれほど落語に詳しいと言うと訳ではない。その中に数人、円丈ファンが混じっていたかなあと言う感じ。
 【リクエストの結果】.....『悲しみの大須』

 この日はお客さんにリクエストのネタをのチラシを渡さなかったので。リクエストをやること自体を知らなかった人が大半!正直14本並べたが、スグに自信を持って出来るネタは数本。
 だから「あれは道具を使うけど持ってこなかったとか」、「今覚えてる最中です」とかもう言い訳三昧!それで3本ほどのリクエストがある、一番拍手の多かった『悲しむの大須』(名古屋にある大須演芸場に出る芸人の喜びと悲しむのドキュメント落語)をやる。

 【実際やって見て..うん、充分だ。「大須」は強いぞ!.】
 この『悲しみの大須』は、落語を知ってる人の方が受けるが、ところが完全に客筋を読み間違えた。わりと一般度の高いお客さん。正直、少しヤバイと思った。しかしやるしかない。ネタに突入!前半はやや反応が鈍い。
  しかしこの噺は芸人たちの悲しみのドキュメント。後半その部分になると笑いながら妙に悲しくなるんだ。お客さんはついて来た。来た来た来た!きたぞ〜〜〜っ。うん、これはいけるぞ!噺が終わってから幕が完全に閉まるまで全員が拍手をし続けた。もう完勝だね。

 

 【リクエスト 3月24日の勝負....円丈グリコに死す!】
 【その日のお客さん..50人以上】
 このシり−ズはあともそうだが一人で来たお客さんが目立つ!客席は6割ほどでかなりこのリクエスト落語を期待してる客が多かった。男性客目立つ。
 【リクエストの選択】....『グリコ少年vr3.0』
 もうあいてる時間はひたすら稽古。なにせ、ケイコなしで出来るネタは、殆どない。やってもすぐ忘れるから一応、特意ネタにお客を誘導して。その間に稽古をして他のネタをできるようにする。もうネタの自転車操業だね。2.3本のリクエストの中から拍手で『グリコ少年』と決定した。ところが...。
 【実際やって見て...ああ、グリコは終わった!】
 この『グリコ少年』を始めた頃(昭和55.6年)は無敵のネタだった。日本全国どこへ行っても外すなんてなかった。しかし今や、子供はキャラメルを食わなくなり、...分らなくなりつつある。40才以上でないと実感として分らない噺になった。私自身も去年は一度もやらなかった。うすうすグリコの時代じゃないと感じていた。
  今はvr3.0になっているが、ギャグの部分ではある程度の笑いがあり、最後お客さんとグリコを食べながらのエンデイング。それなりではあったがもうグリコは終わりだなあ。そんな実感があった。でもこんな程度の噺じゃない。もうそろそろグリコを休ませて上げようか。この日私はグリコとともに死んだ。グリコよ。ありがとう!!

 

 【リクエスト3月25日勝負..『遥かなるたぬきうどん』で勝利!】
 【その日のお客さん・・70人】
 70人以上。女性がいない!2人か3人か、でも温かく迎えてくれてとても良いお客さんだった。
 【リクエストの結果】...『遥かなるたぬきうどん
 とにかく最初に出来ないネタは出来ないと断った。それで3本ぐらいの中から『遥かなるたぬきうどん』をやる。これは今回ラスト部分を少し変更して望んだ。
 【実際やって見て...悪くなかったが、うどんの音がね...】
 このネタ、マッターホルンを登る時、センス(ピッケルで)を2本使う!そのあと更に2本。計4本使う!大体これで笑いを取り、その勢いで本筋になだれ込む。結構笑ってくれた。全体としては良い出来だった。円丈の勝ちだね。
  しかしうまくうどんの音が出ない。稽古の時はでるんだが、本番では出ない。悔しい。恥ずかしい。それとマッタホルンの山頂の噺なのに汗が出てきた。アイガー北壁を登る時、ただ演じるだけだが相当実際筋肉を使うので汗がでる。それとラストをもう少し決めたかった。次回このネタでは、これをなんとかクリアしたい。これが心残りだった。


 

  【リクエスト3月26日の勝負..『横松和平』で圧勝!】
 【その日のお客さん・・30人】
 何人か落語ファンが混じると言った程度。
 【ネタの選択】...ムッとしたお客さん『横松和平』
 実はこの日、拍手の多さでは『悲しみは埼玉に向けて』の方が多かった。でもCDの録音ではこのネタが2席もあったので。では「横松」をやりましょうと勝手にネタを変更してしまった。それじゃあ、リクエストじゃないよね。さすがお客さんもムッとしたねえ。ゴメン!!
 【実際やって見て.....最強のネタ『横松和平』怒涛の勝利】
 ムッとした客は強い。マクラを振ったが殆ど反応なし!ぎゃ〜〜お!噺に入ったら殆ど笑わない。こりゃあネタを変更した報いだね。しかも途中で入るS.Eが別のS.E!もう因果応報だ。これじゃあCDにならないよ。しかし横松の底力はそれから。そのあとジワジワと受けだして最後はジワ〜〜ッと悲しくなってエンディング!完全にお客さんは納得してくれた。あれほど外してな客を引っ張る。最近このネタは外した事がない。円丈最強のネタのひとつだ。いやあ、横松は強い!

 

 【リクエスト 3月27日勝負....『悲しみは埼玉..』でドロー!】
 【その日のお客さん..40人】
 この40人のお客さんは気持がバラバラ!ダジャレで大笑いする人もいればだれがそんなんで笑うかみたいな。もうバラバラで一体感がない。こう言う日は一番やりにくい。
 【ネタの選択】...『悲しみは埼玉に向けて』
 今日は今までで一番一般度の高いお客さん。拍手で『悲しみは埼玉に』に決まる。
 【実際やって見て...やりにくかった『悲しみ埼玉』】
 ツボでは受けるが、すぐ引く!しかも一番笑ってたおばちゃん4人は、ネタに入ったらポカ〜〜ン!まいったなあ。しかも客席全体に熱気がなく、冷え冷えとしてる。なんじゃこりゃあ!とにかく声を嗄らして。ラストに向けて一目散!
  なんとか形はつけたが、いやあ、ホント辛かった。まあこう言う日もあるんだろうね。良い思い出になった!ホントかよ。しかしこう言う日に聞いていたお客さんの中で馬鹿に感動してる人がいたりすることが多い。良くある経験なんだ。ほんとのところはひとりひとりにインタビューして見ないとわからないのが本当のところだ。

 

 【リクエスト 3月28日勝負..『あんたのせい家族』円丈勝利!】
 【その日のお客さん..30人】
 今日は何人か、円丈ファンがいた。上がったときの拍手が温かかった。
 【ネタの選択】....オススメの『アンタの聖家族』
 この日リクエストから『わからない』を外す。一般度の高い平日のお客さんの前で殆ど笑いのない『わからない』はまずいので外した。この日リクエストの出が少ない。そこでオススメはこのネタと『アンタの聖家族』が拍手で一番多くてこれに決定!
 【実際やって見て...オススメネタで堂々勝利!】
 この日の客は楽屋でやりにくいと評判だった。そこで「円丈お笑いツボ体操」をして先ずお客さんをほぐす。かなりの効果!結構一体感が出て盛り上がり、その勢いで『アンタの聖家族』に突入!
  導入部は笑いがあるものの。そのあと少し客が引く。なにしろ、中3の長男がぐれて、おやじのサイフから金を抜いたりする。結構テーマ自体は深刻なのだ。中盤少し前から再び受けはじめ。そして「健太の温かい心」で多少ほわっとした気持になってそのあとまた笑い!充分だ。この落語はかなりのところで受けそうだ。



【リクエスト3月29日の勝負..『ランボー怒りの脱出』辛勝か?】
 【その日のお客さん....30人ほど】
 ?客の半数ほどこのリクエストを目当てに来た感じ
 【ネタの選択....どうもイヤな予感がした『ランボー怒りの脱出』】
 ?本当は「10倍レポーター」「月に吠える」をやりたかったが、拍手でランボーに決定。どうも慣れたネタが今回コケ気味。少し不安!
 【実際やって見て.....少し苦しかった『ランボー怒りの脱出』】
 このネタもいつもの盛り上がりにやや欠ける。少し受けが悪いので、どうしてもう大きな声を出す。終わってからこえが枯れる!やっと勝てたかな。どうもわりと良くやるネタが、どうもコケルのは、全くケイコせずに高座に上がるせいのような気がする。
  普段の時は一度台本を見てチェックするが、それが他のネタをケイコしてるので全くその時間がない。これが最大の原因のようだ。高座には。全体の噺ヲイメージしてから上がるが!それが出来ない。悔しい!!

 

 

【リクエスト3月30日の勝負..衝撃のネタ『稲穂のジュウタン』】
 【その日のお客さん..40人】
 半分以上リクエストの目当てのお客さん。拍手が温かい!ありがとう
 【ネタの選択...これをやりたいと言った.『稲穂のジュウタン』】
 この日は、ムリヤリ、私は『稲穂のジュウタン』で玉砕をしたい!と宣言してから拍手するとやはり『稲穂...』に決まった。当たり前だね。これをやる
 【実際やって見て...笑いは少なかったが衝撃勝ちだ!】
 しかし悔しい!昨夜からズ〜〜ッとケイコして楽屋入り寸前に一度、通してケイコしたらすんなり出来たのに。高座に上がったら間違える、1.2ヶ所セリフが出て来ない。本当悔しい。おじさんの幻覚からストーリーが始まり、幻想的な前半から後半はガラリと変ってドンキホーテおじさんになってしまう。お客さんは、ストーリー展開が全く読めず。しかもこのテーマの本質が重い。
  それを幻覚と言う手法で表現する。なるべく笑いやすくしたつもりだが、笑いが重い!結構ギャグが入ってるいるのに。考えていた25%ほどの笑いしかなかった。しかし最後お客さんの拍手が温かかった。それに落語を録音してたNASAの安部社長が「いい噺ですね」と言ってくれたし、プロデューサー大友氏が「これ名作ですね!」と言ってくれた。この噺は笑うより衝撃の方が強いのかも知れない。しかしもう一度やり今度はこの2倍の笑いを取りたい。だって私のやってるのは、落語なんだから..。


10日間やって見て

いやいや、稽古は大変とはいえ。本当に楽しかった。やはり落語家は落語三昧の暮らしが一番幸せなのかも知れない。しかし今回やって見て思ったことは?

◎慣れたネタがそれ気味だった。
  やはり、慣れたネタも一度は軽く台本の見直しをしないと良くない。
◎やはりケイコ量がまだ足りない。
  キチンと座ってケイコをしてからでないといけない。しかしひたすら覚えるだけで時間がきて。そこまで行かなかった。
◎ネタくりタイムが必要!
リクエストを貰ってから一度楽屋に引っ込んでスグ上がる。これが微妙。上がる時はある精神集中してから上がるのだが、その時間がない。5分ぐらい時間があるともう少し違う。
◎落語録音はややつらい。
大体噺に入る前にある程度受けさせてから本題に入るが、録音ではいつも同じようなネタはふれない。そこであっさり振ってからネタに入るが、これがそれが少しつらい。
◎寄席でもトリなら20本ぐらいのネタは出来る。
 寄席でも新作は充分できる。これがわかったでけでも大きな収穫だ。次は更にネタを仕上げて前回より、さらに面白いといわれるように頑張りたい。

応援ありがとうございました。もう感謝、感謝!!



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