更新日06/03/24

 円丈の古典落落語だよ〜っ

 円丈は05年に古典落語解禁宣言を行った。しかし、そもそも円丈が古典をしなくなった訳は退路を絶って新作一本で走り続け、作り続けるため、そしてもうひとつは、周りから「ほ〜ら、やっぱ円丈は古典に戻ったろ!」なんて言われるのが悔しいからだった。

  しかし60才を過ぎ、円丈は人生のラストランを迎えた。しかし芸人円丈の完成を考えた時、本当にこのまま古典をしなくていいのか?古典も新作も両方やって、芸人円丈の完成(勿論、そんな芸の完成とか、芸人の完成なんてないが、一応、ここでは完成と言う言葉を使わせてもらった)をすべきだろう。

  更に最近の若手噺家の中では大して受けなくなのに平然と「これが古典です」なんて偉そうにしかも「私はうまいしょ?」みたいにやってる連中には正直、我慢がならない。「落語に古典も新作もあるか!ウケてこそ落語だろ!」みたいな想いがある。それやこれやでもやはや円丈が古典落語をやらない理由が見つからなくなった。 そしてここでは、円丈の古典に対する考え方、古典関係のことをここに書いてみた。
  三遊亭 円 丈

【画像:愛犬ろっきぃと綾瀬稲荷にて・・・平成18年正月】
 


第一回

 前座、二つ目時代に百三十本の古典落語

【真打までに古典130本】
円丈は六代目三遊亭円生に入門して、前座、二ツ目時代、百三十本の古典落語を覚えた。まあ、特に多いとは思わないが、でも二ツ目の後半にはかなり自作の新作にも力を入れて作っていたので、まあそれを考えると結構な数だと思う。今時の若手真打より、ネタは多いのではないだろうか?
【円丈の古典の才能は?】
 自分で言うのもなんだけど結構ある!師円生は、入門して3本目に「たらちめ」の稽古が終わった時、知り合いに電話してたのを聞いてしまった。円生は「あたしゃ、ぬう生(円丈の前座名)があんなに出来るとは思いませんでした」と電話していい弟子が入ったと喜んでいた。しかし私はうれしかった反面、「なんだ、今頃気がついたのか?」と思った。いや、傲慢だね。
  でも正直、その程度の自信はあった。また円生が「あのぬう生には、あたしにない不思議なフラを持っています」言ったのは今も語り草になっている。そして真打の時は6人抜擢で真打になり、円生は円丈の真打昇進披露興行で五十日間一日も休まず、付き合った。それはその後、落語協会が分裂すると言う別な要因もあったのだけど、円生の弟子の中で襲名披露を全て出たのは円丈だけ、やはりこの中には円丈に対する期待の高さも物語ってると思う。
【師円生の弟子の基本方針・・前座の間は他に稽古にいくな】
円生は、弟子に「前座の間はわたしが教えるから、他に稽古に行くな」と言うのが、基本方針だった。その理由は「前座の内に他へ稽古に行くと芸にヘンな癖つくやすから・・」と言う理由だった。でも円丈は師匠に隠れて良く他へ稽古に行って、師匠が出てない寄席では、その他から教わった噺をどんどん掛けていた。師匠には師匠の考え方があるだろうけど、私には私の考えたかがあったのだ。
【前座の頃からそこそこ受けていた】
 円丈は、前座の頃からそこそこ受けていた。これは確かだね。与太郎モノは平均よく受けてた。「道具屋」も良くウケたし、名古屋弁の「金明竹」なんか、前座だけど客席を沸かしていたね。正直、なんでこんなにうけるのかと思ったほどだね。
  今は、番組に穴が開いても前座がつなぎで上がるということはないけど、昔は穴が開くと良く前座が上がった。円丈も何回か上がったことがあるけど良く受けるんだ。第一、穴が開いて前座が出てきたと言うハプニング自体を客は喜ぶんだね。そこで「ナントカ師匠が来るまで、死ぬ気になってやりますなんて言うと、「よっ、頑張れ」なんて妙に盛り上がっちゃうんだ。その勢いでネタに入っても良く受けたね。ホントに「なんだ、楽じゃねえか!二ツ目とならドッコイの勝負が出来るな」といつも思っていた。
【円生独演会・・兄弟子が討ち死にする中でぬう生は良くウケた】
 特筆すべくは、人形町末広亭で行われた「円生独演会」だったね。大体、円生独演会の客は、円生信者だからね。そんなところに弟子なんか上がっても受けない。しかし、しかし前座で上がったぬう生は受けた。なぜか?
  それは円生の弟子って、良く師匠に似てる。ホンモノの円生が出てくるのに、師匠ソックリな芸の弟子がやっても受ける訳がない。ところがぬう生は、全然、円生の匂いがしない。ぬう生は前座の項からぬう生の芸だった。円生の鬼ッ子のよう弟子だったので良く受けた。実は円丈は既に前座時代から意識して、円生節を抜く努力をしてたんだ。


【実際、どんな噺をしてたのか?】
与太郎モノ
「道具屋」、「金明竹」、「から抜け」・・おもしろいフラがあるので割りと良くウケていた。
怒鳴りモノ
どう言う落語の分け方だ?この怒鳴りモノと言うは「無精床」「胸肋鼠」とかで、大きな声が「イテテテッ」「バカ!客が三度いてえったらやめるんだ」と演ずる。元々地声が大きいので円丈の独壇場。特に「胸肋鼠」は「胸肋鼠」は今も覚えてる仲間がいていあれはおもしろいと言う芸人がいる。
しかし、この怒鳴りモノは、受けなかったり、少し癪にさわった時は、ムチャクチャ怒鳴った。もうお客さんを怒鳴るようにやった時は、もうお客脅迫落語になってしまい。客席が凍りついた感じになり、諸刃の剣だった。
粗忽モノ
「粗忽の釘」、「堀の内」も結構よくやった。その中でも「粗忽の釘」は安定して笑いを取っていたと思う。粗忽や、与太郎モノは、合うんだろうね。
 廓 噺
 女郎買いの廓噺は、結構やった。「錦の袈裟」、「突き落とし」、「五人廻し」、「お見立て」、「粟餅」、「居残り佐平次」など・・。「粟餅」は、師円生が、当時おじいさんの噺家で古今亭志ん好師がいて、そこへ稽古に行って教わって来いと言われて、稽古に行き、粟餅をうんこに見立てて、吉原で一芝居うつと言うあんまりきれいな噺ではない、3.4回やったろうか。この廓噺もそこそこ受けた。
根問いモノ
「やかん」、「千早や」・・。「やかん」もそれなりに受けた。「千早や」はサゲが「“とは”と言うのは千早の本名だった」と言うのを「“とは”と言うのは千早の戒名だった」と直してやって受けてたね。
大ネタ
「火炎太鼓」、「茶の湯」、「はてなの茶碗」、「妾馬」などは比較的よくやった。良かったんじゃないかね。それから「火炎太鼓」は、5.6回やったけど、このネタで当時外したことは一度もない。正直、作が良いんだね。
怪談モノ
「真風累ケ淵」、「宗悦殺し」・・。これらは、そんなにやった訳じゃない。「宗悦殺し」は、講釈の先代の一龍斉貞山先生のを黙って覚えた。この貞山先生の怪談の恐さでは際立っていた人だね。まあ、怪談モノは、さほど自慢出来るほどのことはないけど、でも新作をやる時の不気味な感じの表現なんかで役に立った。
  とにかく噺家は、色んな傾向の噺を一通りやって見るべきだね。
幇間ネタ
「鰻の幇間」、「幇間腹」など・・。大体、明るい陽気な芸風なのでこの幇間ネタはよく合うね。
その他ねた
あとは「三人旅」、「替わり目」、「宗論」、「強情灸」なんかだね。


第2回

 今、円丈は古典は本気でやる気!



【これが古典落語に関する円丈の方針】
 円丈の古典落語に対して今後どうするか、その方針が決まっている。ほんじゃ、どうするのか?
 【方針その一・・マクラは変えられるだけ、変える】
 
落語で大切なのはマクラ!古典をやる時もどれだけ、マクラが変えられるのか?これがまずひとつの目安なのだ。教わった通りやってるようじゃ、プロじゃない。もうそう言う時代なのだ。だから古典の時こそ、オリジナルのマクラにこだわる。
【江戸時代の背景のものは、古典ベースを大切にする】

  正直、江戸時代のモノはあまり現代のギャグをそれほど入れない。円丈が古典落語をやるからと言って、何でもかんでも変える訳ではない。演出や、シナリオの手直しで対応して、古典を壊すつもりはない。つまり円丈は古典本流の中でこれらのネタは勝負したい。  
【大胆にデフォルメ出来るモノはためらわずやる】

  一方、設定自体を変えられるモノは大体に変える。「今度、自分でやることになった「手紙無筆USA」は、字が読めないと言うテーマを英語が、良く分からないという現代の設定にしている。一度やってみたが、結構受ける。しかし本来は読めないのに読める知ったかぶり振りをすると言うのと英語が出来ないのに出来る振りをすると言う底流に流れるテーマは不変なのだ。
 
【あまり受けなくなったネタをどうよみがせられるのか?】

 この辺が、一番大切なところ。現在、ワンワン受けているネタがあれば、それを変える必要はない訳で、受けなくなった噺をどうアレンジして、再びおもしろい噺にするのか?ここが一番のポイントだと思う。


【今、着々と古典計画進行中】
 去年の暮れから古典復活宣言して、実は着々と進行中なのだ。

【現在やってるネタ、及びこれからやりたいネタ】
「名古屋弁金明竹」
 4.5年前から、以前のを少しアレンジしてやりだした。良く受ける。最近は、貸し傘を断るくだりから始める。講演なんかした時、最後のこの「金明竹」をやるけど、まず外さない。安定してる。
「茶の湯」
「横浜にぎわい座」で、少しアレンジしてやり、拍手喝さいを浴びた。そのあと一度やった時はやや、ウケが鈍かった。さらにもう少し改良を加えて、これが円丈の「茶の湯」だ。どうだ?って感じにしたい。果たしてそうなるのか?
『小言幸兵衛』
 円丈オリジナルのキレ・キャラの幸兵衛!これもにぎわい座でやって、それなりの評価はあった。しかし、本人としては、今ひとつ納得が行かない。それで前半をサラサラと削って台本のアレンジは完了した。まだそれを覚えていないが、もう一度、チャレンジして、なんとか円丈の持ちネタにしたい。
『居残り佐平次』
 今度、これをにぎわい座でやるので台本の入力を終え、とにかく長い噺なので、これを3分の1カットした。さらに少し台本の手直し、さらにマクラをオリジナル・マクラを作った。更に師円生のDVDを見て研究中!どれだけ佐平次のキャラを安定して、演じられるか、どんなキャラにするのか?その辺が一番のキー・ポイントだと思う。
『手紙無筆USA』
 これはある人にために約10年近く前に作ったの。その後、お弟子さんにも台本を読んでもらい。これなら受ける筈と言われながら、ズ〜〜ッてしなかった噺。ついに10年ぶりに円丈自身がやることになった。それで更に台本アレンジを推敲して、やっと出来上がった。一度やってみたが、そこそこ、受ける!いけるね。このネタは!あと2.3回やって見て、更にもう一度おもしろく改良したい。
『真風累ケ淵』
 昔、一度やった時、色っぽい豊志賀が「新さん!」と言ったらプッと笑われた。畜生!この時のリベンジをするぞ。悔しい。見てろ、今度はホントに色っぽい豊志賀を演じてみせるぞ。ホントか?
『包丁』
 これは師円生の得意ネタ。でも円丈はやったことがない。三遊は女性の出てくる噺が多いが円丈は苦手。この「包丁」も女性が出てくる。円丈は、女性を出すのが苦手だったがやるよ!その苦手を克服するぞ。今、三遊亭でこの手の噺をやる噺家がいない。だったら円丈がかるかだね。それなりのアレンジは、すでも考えている。まだ何時やるかは考えてないが、この1年でやるよ。円丈は目下ラスト・ラン!残された時間はさほどない。
『芝浜』
 いろんな人に聞くとこの「芝浜」をやった時の感想がどうもひとつのその噺家の評価になるみたいなとこがある。それならひとつやってやろうじゃないか?これも正調「芝浜」でやるよ。
『はてなの茶碗』
 これは、現金馬師匠に教わった。やった頃は結構受けて何回かやった。しかし、これも忘れてしまった。困ってる。でもこれもナントカ覚えなおしてやってみたい。
「派手彦」
 これも女性の出てくる噺。この女性が出る噺で柳家に差を付けたい。ぜひぜひやってみたいね。多分やる時は後半のストーリーを変更してやる予定だ。一体、どんな「派手彦」になるのか、やる本人の円丈が一番楽しみだ。
『粗忽の釘』
 二つ目時代に数十回、ことによると百回ぐらいやったかも知れない。結構受けた。ところがそんなに何度もやってたのに・・。今はもう覚えてない。ああ・情けない!これを復活させ、少しアレンジしてやりたいと思っている。


【ああ、情けない!!】
 【70代の師円生の方が、今の60代円丈より、早口だった・・・グエッ!!】
これは愕然としたね。 「居残り佐平次」を聞いていて、円生と一緒に喋ると言葉を噛んで話せない。ええ、70代の師円生の方が、60代の円丈より、早口なんだ。あ〜〜〜〜〜〜〜〜あ、情けない。
  でも多少言い訳をさせてもらうと。円丈は元々訥弁で訥々と話すタイプで、しかも入歯なんだ。実はこれが話す時の最大のネックになってる。実は発音しにくいんだ。上手く話せない。それでも今より、もう少し早く話すことを心掛けないと先代の彦六師匠みたいに間延びした噺になってしまうので、この頃は多少意識して早く話せるように努力している。師匠、すんません!



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