03/09/30
 亜郎出演のミュージカル『レ・ミゼラブル』一門総見記

 2003年夏、弟子の亜郎が、東宝ミュージカルの『レ・ミゼラブル』に出演。カミサンと娘が行って「とっても良かった!」と感心しきり、ホント、マジ?そこで9月に一門にで総見することになった。果たしてホントに翻訳ミュージカルはおもしろいのか?客はホントに入っているのか?亜郎は、どの程度の役なのか?この目でシッカリと確かめることにした。これはその総見記だよ。  三遊亭 円 丈

 グエッ、もう毎日満員!
当日、仕事の小田原丈を除いた全員で総見!この「レ・ミゼラルブル」一番高い席が1万数千円。それじゃ高すぎる。しかし2階席じゃみっともない。そこで間を取って、9000円のA席にした。中央通路の後ろ4列目。この日も2000人入る帝国劇場は満員御礼。一方、2500円の寄席の方は全然満員じゃない。一体どうなっとるんだ。

 入り口で記念撮影。アッ、指の向きを違えた。えっ、白々しい?そうだね。この日も75%が女性。
【帝国劇場入り口にて、撮影かぬうだから彼は映っていない】


 そもそもミュージカル『レ・ミゼラブル』とは?
 ビクトル・ユーゴー『ああ,無情』のミュージカル版。1985年ロンドンで初演されて以来。30カ国以上の国で上演されてきた作品。音楽、シナリオは勿論のこと舞台装置、照明に演出家までが来て指導する。違うのは役者が日本人で日本語で歌う以外は本場とすべて同じ。このミュージカルの原作『ああ、無情』はあくまでも原作。かなり脚色してある。だから私は小学生の頃、子供向けに書き直した『岩窟王』を読み、学生時代に翻訳の『ああ無情』と二度も読んでるけど、かなり大幅にアレンジしているので。ストーリーが、良く分らなかった。

・・なかなか良い位置の亜郎
 楽屋の出演者札が4段に並び、その中で亜郎は最上段の一番中央にあるのが、あろうの札!スゴイね。「じゃ、亜郎が主役じゃない!」と思ったら、大間違い。この札の順版。まず最初に一番左、次が一番右、ニ番目左、ニ番目右となって最後に中央になるので。最上段では一番ランクが下!なんだそうかよ。しかしいずれにしろ。なかなかの厚遇され、コレを見ただけでも良い役みたいだねえ。よかった。よかった。
 【実際の亜郎の役は?】
  亜郎の役は飲み屋の親父で森公久子さんと夫婦役。調子の良い男でゴマスリしながら、客の金を抜き取る憎めない悪役。この重苦しいミュージカルの中で唯一、笑いを取れるスンゴイ儲け役で亜郎も結構、調子の良いトコもあるのでハマリ役かも知れない。見事に目立っていた。しかもカミサン役の森公美子氏より、はるかにセリフも多い。これで亜郎はキャリア・アップ出来たと思うね。

【少し読みにくいが、最上段の札がやや曲がったのが三遊亭亜郎】
 



このミュージカルのここがどうも・・・・ね!

【ホントにミュージカルって歌だけなんだね】
  つまんないこと関心するけど。休憩入れて約3時間。全部、歌だけなんだ。セリフがないから「たまには喋れ!」と言いたくなる。でも弟子天どんによれば、3つ歌わないセリフがあってそれが「おい」と「こら」もうひとつあった。しかしそれは歌ってるんだけど歌が短くて歌に聞えなかっただけじゃないのかね。
【歌いぱなしなのでス トーリーが良く分らない】
 このミュージカルは大体のことしか分らないね。別にナレーションがある訳じゃなし、いきなり幕が開くと歌い始めて最後まで歌ってENDだから・・。多分こうだろうと推測しながら見るんだ。正直、4.5回見ないと全部は分らないと思うね。
【オーケストトラの生演奏だけど・・】
 このミュージカルは、舞台の直ぐ下にオーケストラ・ボックスがあって生演奏だけど。ここの音はクラシックのコンサートの生の迫力には敵わないね。音に迫力がない。これでもクラシック・コンサートは今まで10回ほどは見てる。クラシックは生の音が直接、響いてくるけど。ここのは一度マイクで音を拾ってその音がスピーカーから出てくる。スピーカーを通した音だから全く物足りない。せっかく生演奏しながら、あれじゃ生演奏の価値がない。これが一番の不満だった。
【中入り前がダレた】
 前半が1時間半あるんだけど1時間まではついていけたけどそのアトの30分がダレた。隣のかぬうは、一度リハを見ているので「おい、中入りはまだかよ?」と2回聞いた。正直、少々つらかった。

 でもここが凄かった『レ・ミゼラブル』!!

【緞帳を一度も見なかった芝居】
この『レ・ミゼラブル』では緞帳は一度も見ることがない。開場して場内に入るとやや透けて見える紗のカーテンに『レ・ミゼラブル』のタイトルが映し出される。休憩の時もこれ!とうとう最後まで緞帳は見なかった。
【セットが殆どない舞台】
なんとなくイメージとしては19世紀のフランスが舞台だから石の建物や、レンガ造りの家のセットを考えていたが、舞台にはそう言うかっきりしたセットは出てこない。瓦礫とか、貧民窟のシーンは、それ風のオブジェが出てくるだけ。
【光と影が使い方が絶妙!】
 とにかく光に影のミュージカル。もう照明の使い方は絶妙だ。浮世絵的な平面感覚を持つ日本人にはあれは無理だね。ベット人で寝てる人とそばにいる人間。この2人にボヤアとした照明で重く暗いシーン。そこにピンスポが当るとライトに白いシャツがハレーションを起こし、その暗いシーンが,突然、希望に満ちたシーンに変わってしまう。いやあ、スゴイ!この光の使い方は驚きだね。
【スモーク名人がいるね】
芝居でスモークを使うことは良くあるけど、大体、薄い霧を出すぐらいけど、ここのスモークの使い方で驚くのは、止ったスモーク!ボワンと雲のような形の止ったスモークが出現する。一体、どうやってあの雲のように止ったスモークを作れるんだ。その雲のようなスモークが、だんだん形が崩れ、上に上がって舞台の上に届く頃、次のシーンになる。計算しつくされてる。あれはスモークのジョージとか、言われるスモーク名人がやってるね。

【後半は息も尽かせぬ展開】
 前半ダラ〜〜ッとしていたが、後半になると場面展開も速くなり、息も尽かせぬ展開で段々客を引き込んでいく。前半のあのダレ場はわざとかもしれないね。2時間の映画だと途中でわざとダレ場を作ることがあるが、このミュージカルも狙って作ったダレ場なのか?しかしそれにしては少しダレ過ぎたけど。
【見事・・大合唱サゲ!】
 後半ポンポン、ストーリーが進展し、主人公ジャン・バルジャンが死にあの世でみんなで大合唱オチ!ミュージカルはオチって言わないからラストだね。30人ぐらいで絶叫するような大合唱で幕が下りる。
  すると「もうなんか、分んないけど・・いや、こりゃタマゲタ!感動するよ」って大拍手で幕が下り、同時にこれが、カーテン・コールの拍手にもなる。すると直ぐカーテン・コールで幕が開く・・もう計算し尽してるね。どうも計算どおりに感動させられてるようで、少し悔しいけどまさにプロの仕事だね。亜郎も目立っていたしめでたしねでたし!

【左から天どん、らん丈、円丈、白鳥、上亜郎。撮影:かぬう】

 

 最近直輸入物の翻訳劇が増えてるけど・・チャンと訳があるんだ

 ここ15年、日本の劇場でヒットするの芝居は、直輸入物ばかりって言うのは納得できるね。台本も照明も演出もシッカリしてるんだから。そりゃあ、考えるとヒットする訳だ。そう言えば私も読む本は殆ど、翻訳本ばっかりで、見る映画も洋画専門だもんね。「座頭市」を見ようかとも思うけど。なんか見る勇気が湧いて来ない。でも見るか?(円丈)



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