何かでチョッと落語家を頼みたい。そんな時が一度ぐらいある。
しかし、どこにどうやって頼むのか? いくらなの? で呼んだらどう対応した
ら? しかし、こんな本は売ってない。
そこで芸人円丈が、自らどう頼むのかを指導した。まかせなさ〜〜〜い。
【画像:仕事よ・おいで〜え、おいで〜っ】 |
|
畑違いのプロダクションは、避けるべし |
所属タレントが、俳優ばっかり。そんなところに頼んでも結局、他のプロダクションに紹介が行く。するとそこにマージンが、上積みされるのでどうしても割高になる。つまり芸人を商品、プロダクションを問屋と考えれば納得できるだろう。いくつかの流通経路を通過する度にマージンが上乗せされ、芸人のギャラが上がっていくことになる。だから流通経路をスッキリするためにも落語家を頼みたければ落語を中心に演芸を扱っているプロダクションに頼むべきだろう。 |
大手プロダクションを避ける。 |
総予算500万なんて仕事を頼むならとにかく。安い仕事を大手に頼んでも良い顔されないし、 また断られる可能性も高い。大手なら200万円以上の仕事でないと頼まないほうが無難だ。 |
暴力団系は避ける。 |
昔はこの系統の事務所が多かったが、今は殆どない。でもあることはある。「どれがそうだよ?」と言われてもねえ。 仮に知らずに頼んでも特別に高いとか、因縁をつけると言うコトはない。 結構きっちり仕事をしてくれるだろう。ただギャラを払わなかったりしたら そりゃあ賑やかだろうね。 |
名指しの場合は、その個人事務所へ。 |
どうしてもある特定の芸人が欲しい場合、その人が少し売れてる芸人なら個人事務所がある。 そこに頼むのが一番いい。流通経路がない分、多少なりとも安く頼めるかもしれないし、それに間にもうひとつ事務所がかんでいると細かい連絡などつけにくい場合がある。 それに直接頼んだと言う安心感がある。ちなみに私は、この個人事務所がない。だから完全なジカ取引。ホントは作りたいんだけど....。 |
芸人に直接頼む |
これは結構いいかも知れない。時々、誰か若手を一人なんて頼まれる時があるが、 間でマージンを取ってると思われるのが悔しいので紹介だけしてあとは、適当に当事者同士でやってもらってる。しかし、芸人に頼めば必ず安くなると言うものでもない。他の芸人を紹介する時はキッチリとギャラを取る。仲間の芸人をそんなに安く売っては失礼になる。それに他人のギャラならハッキリ言える。 |
講演専門の事務所に頼む! |
演芸は畑違いになるが、講演依頼専門にやっている事務所がある。これもピンキリで 一概には言えないが、誰もついてこない事務所。これはだれも行かない分だけ、 コストダウンが出来るので多少割安に頼める利点がある。しかしその分呼んだ方が、切符の手配から駅までの送迎までしなくてはいけない。それに うっかり、芸人が列車に乗り遅れたりしたらこれまた大変! なんにでも一長一短がある。 |
仕事が都内と地方ではギャラが違う! |
これはその芸人によっても違うので正確ではないが、東京にいる芸人なら東京の仕事は 安く行く。それは他の仕事と掛け持ちが出来る。何時間もかけて行く地方の仕事は、掛け持ちもできない。ただし、“営業”の仕事は別のようだ。少なくとも東京の仕事。多少安くても交渉が成立する場合多い。 |
酒の席での仕事は高い!! |
芸人は誰も宴会でワアワア騒いでる仕事なんか正直したくない。したくない仕事は高い! 汚れる仕事と清潔な仕事では、汚れる仕事は時給が高いのと同じこと。こう言う仕事でギャラを値切ってもOKとは言わない。 少なくとも私は、一円でもギャラを安くする気はない!! 目イッパイ頂く。
|
芸人が好意的な地域寄席 |
東京近郊なんかで良く同好の人が集まって地域寄席を開いてるが、出演する側は、 かなり安いギャラでも好意的に出演してる。これは、企画する側が営利でなく厚意でしているので 芸人も協力的なのだ。 これは、かなり遠い地方でやっていても通常の地方の仕事より、割安で出演しているケースも多い。ただ、これは、ここの芸人によって違うので必ず100%そうだと言うわけではない。
|
1回と2回じゃギャラが違う! |
これは、事務所に所属してる落語家はキッチリと違う。私の場合、個人なのでハッキリしてない。
状況を聞いてケースbyケースでの大体同じことが多い |
一席と独演会では違う! |
これも当然、3席演る独演会と一席だけの仕事ではやはりギャラが違う。 |
結局、拘束時間と仕事の内容でギャラは決まる。 |
例えばイベントショーの司会を時間してそのあと30分の落語。これを一日3回してくれ! って言われたらそりゃ疲れるから普通の営業よりは少し多めに貰う。 当たり前といえば当たり前の話。これ、事務所所属の芸人でも個人でも同じことになる。 |
各落語家のギャラ公開はしていない |
残念なことに各個人の芸人のギャラ公開はされてない。それは主にプロダクション同士や仕事先との関係により、複雑にギャラが決定される側面があるので完全にギャラ公開すると中間の事務所の取り分が分かってしまうし、またその事務所との長年の付き合い方で売値が、多少違ってくることもある。
私自身もギャラ公開をしたいと思っているが、従来から仕事を貰ってる事務所に迷惑をかけることになるので今回ギャラ公開は、差し控える。我々芸人もやはり商品の一種である。しかしその商品の値段を公開しない全く変な世界であると言わざるを得ない。21世紀には、芸人もキチンとギャラ公開する。これは当たり前のことだと思う。 |
前座の仕事ってなに? |
開口一番に落語を一席(前座なので大して面白くはないが)、舞台の進行(高座返し..座布団をひっくり返したり、めくりを返す)、楽屋では先輩の芸人の世話を一切をやってくれるのでなかなか便利! ギャラも安い。前座ともう一人落語家を頼めばもうそれで立派な落語会の出来あがりとなる。落語家といえばすぐ真打を思い浮かべるが、噺家のランクは前座、二ツ目、真打の3段階あり、二ツ目はその中間のランキング。なんとなく大したイメージはないが、噺家の人生の中で最も燃えてる時期がこの二ツ目時代。やる気のない真打より、燃えてる二ツ目の方が、数段面白いことはよくある。もちろん、ダメな二ツ目もいるが、この二ツ目を上手く使うことでコストを下げられる。 |
芸人種類 |
ギャラ |
説明 |
前 座 |
5千円
〜3万円 |
5千円と言うのは、仲間の勉強会のような お仲間価格で、たとえ仲間でも良い顔はしない。都内なら一万、地方なら最低二万は必要! |
二ツ目 |
2万
〜15万円 |
随分差があるが、これは二ツ目になるとかなり人気、実力に差がつく。拘束時間の長い、
3時間司会のあと落語一席なんてヘビーな仕事でなければ10万円以下で充分頼める。 都内なら5万以下でも即OK! |
真 打 |
5万
〜百数十万円 |
もうムチャクチャな差だが、名の通った誰でも聞いてみたい噺家と、仲間も忘れてるような芸人では、当然の格差だ。百万を越す関東の芸人は、2,3人いるかどうか。笑点メンバークラスで数十万あたりと思う。
更に真打でも中には、都内なら5万以下で行く人もいるかもしれない。ただ他人のギャラは、仲間でも良く分からないと言うのが本当のところ |
売れてる
お笑い系 |
時価 |
もう松茸と同じ・・・。売れてる時にド〜〜ンと取ろう言う訳だ。それで来て5分しかやらなかったして。。何百万円だろう。
でも一千万円を超える芸人はいない。しかし、1千万円ギャラの芸人の舞台を見て、笑える?いくらおかしくても笑えないね。
|
寄席の色物 |
5万
〜??? |
寄席に出てる色モノの人も結構知られている芸人になれば、かなりギャラは高そうだ。
しかし一般的に寄席の色モノの人の多くはギャラを言わない人が多い。正直、こっちも困る。それでギャラはこんなもんじゃないかと考えて上げる。出それを相手は受け取る。果たして一体、ギャラはいくらだったのか?分からない。まあ、そう言う仕事のやり方なんだろうね。噺家でも自分のギャラを言わない人は多い。 |
|
|
|
円丈の場合 |
1位 |
成人式 |
誰も聞いていない!ホントにコイツら成人か? |
現在、円丈は成人式の仕事はお断りしてます。 |
2位 |
立食パ-ティの余興 |
食べるのと名刺交換が忙しくだれも聞かない?ウケナイ!落語や、漫談で受けるのはムリだね! |
この仕事の時は必ず「絶対うけませんよ!それでも良いですか?」と聞いてから引き受ける。正直10回に1回ぐらいしかうけない。 |
3位 |
組関係の祝い事 |
親分が笑った時だけ、子分が笑う団体笑い。たまに知らずに行って冷や汗を掻く者がいるようだ。 |
残念ですが、来ればお断りしとります。 |
4位 |
観光バスの往復の車内 |
観光バスの車内で退屈させないようにクイズや、ゲームをする・もう拘束時間が長くて、しかも逃げ場がなくて、もう大変。その割にギャラは安い。安い、長い、つらいの三重苦の仕事! |
ギャラが合わないとやりません。だからギャラが、合わないように設定してます。 |
5位 |
入院患者の慰問 |
相手が病人なのであまりウケさせると死んじゃうかと心配しながらやる。 |
もちろん、引き受けます。 |
最近、噺家の仕事の範囲が狭まってる。落語が主な仕事になって来た。以前は、イベント関係の仕事が、結構あったが、今はこう言う仕事は、殆どいまどきのお笑いタレントに持ってかれてしまった。 正直、噺家全体の仕事量は減ってると思う。、
更にそれに噺家の数が増えてきてのでその分も仕事が減ってると思う。 |
こんな事もたまにはあるらしい。
と言うことで失敗例を紹介です。
例1:なんとギャラが、30倍になってしまった!
もう7、8年前のこと。ある二ツ目が、スナックの開店祝いのイベントで北海道へ。するとそのスナックのマスターが
「司会しろ!小話だ。客のヨイショしろ!」
と人使いの荒いこと。そこでその二ツ目は
「冗談じゃありませんよ。5万のギャラでこんなに使われちゃ!」
「なに言ってんだ。オレは百五十万払ってんだ!」
「えっ、百五十万?」
実はこのスナックのマスターは、地元のプロダクションに落語家を依頼した。
しかしそこは、落語家にルートがないので他の事務所に。
こうしていくつかの事務所を通る内にそれぞれが、中間マージンを取ったらギャラが膨れ上がり150万円!
芸人もマスターも被害者に!
こんなことはめったにないが、でもあるんです。
例2:「もう5百円からいきます!」
ある著名な噺家、名誉のために名前は伏す。
以前高座に上がると
「え〜わたしは、もうギャラのことは言いません。5百円からいきますから...」
とジョークで言ってたら電話が掛かってきて
「来月の12日、空いてますか?」
「エー、空いてます。どうも」
「5百円でいいですね?」
「エッ? 5百円?」
それから粘られてとうとう5百円で仕事に行った。このたぐいの話は多くて
「もう引越しの手伝いから大掃除までなんでもします!」
と若手の噺家が高座で言ってたら
「大掃除手伝ってください!」
と電話があったとか、よくある。でも私は5百円では死んでも行きません。念のため!
例3:ごねる芸人
これも著名な落語家。すこし説明するとあの人?と分かるのでヒントらしきことは言わない。ある仕事で
かなり間際に来て、次の出番なのに着替える様子がない。そこでどうしたんですか?と聞くと
「あのギャラでは安過ぎる。あれの倍でないと俺は、かえる!」
困った主催者が、金をかき集めて渡したら、夜の部になったらまた着替えない。聞くと
「あれで昼夜のギャラは安すぎる。アト1回分くれなきゃ帰る」
そこで更に1回分のギャラを取られ、なんと3回分払った。私も一度やってやろうかと思うが、なかなか勇気がなくて....。
例4:ゴルフ付きあって30万円
これも著名な落語家。すこし説明するとあの人?と分かるのでヒントらしきことは言わない。ある仕事で かなり間際に来て、次の出番なのに着替える様子がない。そこでどうしたんですか?と聞くと
「あのギャラでは安過ぎる。あれの倍でないと俺は、かえる!」
困った主催者が、金をかき集めて渡したら、夜の部になったらまた着替えない。聞くと
「あれで昼夜のギャラは安すぎる。アト1回分くれなきゃ帰る」
そこで更に1回分のギャラを取られ、なんと3回分払った。私も一度やってやろうかと思うが、なかなか勇気がなくて....。
仕事を頼んだ場合。実はこんな不文律があるんだ・・・】
常識1.アゴ足つきである
アゴとは「食事」、足とは「交通費」のこと!つまり、ギャラの他に主催者側が食事代、交通費、宿泊費持ちと言うこと。もちろんマネ−ジャ−が、同行すればその分も負担することになる。
「なんでそんなモノまで負担しなきゃ行けないんだ?メシなんて自分の金で食え」
と思うかもしれない。しかしそれがこの興行世界の不文律。昔からそうなっているんだから仕方がない。考えると気の毒だ。
常識2.必ず駅まで送り迎え!!
都内はそうでもないが、地方の場合は主催者が駅まで送り迎えをするのが、常識となっている。これをしないと手違いで別の場所に行ったり、頼んだ芸人がこないことがある。
ある意味で芸人の送迎は、犯人護送みたいな意味あいもあり、無事に終わらせようと思ったらやはり、送迎した方が無難。それに迎えにもこないと芸人がふてくされて手を抜かれても困る。
常識3.最初の仕事は現金が常識!
何度か取引してる事務所ならともかく、最初の取引仕先からは当日現金で貰うのは当然のこと。講演の仕事をしてるある人は、仕事前日までに銀行振り込みがないと当日行かないと公言してる。それでなんどか仕事をしてから月末締めの翌月払いとなる。
常識4.当日の楽屋入りは1時間前入りが基本!
場所、内容により、多少違うが大体一時間前は普通。地方の場合、列車に1本乗り遅れても間に合うように少し余裕を持って決めていれば安心である。
ただ中に2,3時間も前に楽屋入りさせるところがあるが、評判が悪い。
常識5.切符、コースの設定は主催者がする!
都内の仕事は、会場の地図と何時入りで良いんだが、地方の場合は、コ−スや切符の手配送り迎えをする。事務所でする場合もあるが、大抵主催者が買って切符など送る場合が多い。またその方が無難だ。
常識6.地元の観光案内は大して喜ばない!!
よく主催者側でここにこんな珍しいものがあると案内してくれる時があるが、ほとんど芸人は喜ばない。芸人、タレントは間際に楽屋入りし、終わったらサッと帰ると言うのが一番好き。
まして一晩泊まってあくる日に観光案内!もう死ぬほどイヤがる。打ち上げもあまり喜ばない。
常識7.ギャラは終わった瞬間出すのがベスト!!
ギャラは、なかなか請求しにくく、終わってもなかなか出さないと心配になるし帰るに帰れない。終わった時にサッと出されると気持ちがいい。
また、上がる前でも良いのだが貰うと安心してボッとしてしまう。中にはそのまま帰る...はないけど。やはりハングリ−な気持ちで舞台に上がらせた方が、出来もいい。
◎落語トップに戻る |