同時進行レポート第2

 修理のために体から切り離されて顔だけになってしまった顔だけ狛犬。その表情は、体から切り離された無念、恨みを含んだ表情だった。そこで漆塗りの台をつけ、裏に碑文を刻み、完成した。しかしホントに彼の苦しみは終わったのか?まだ怒cつているのではないのか?これは今回はその後半部分、完成するまでの顔だけ狛犬救済計画のレポ−トである。  三遊亭 円丈

注文した目玉レンズに泡が.あわあわ..H13年3月
 台東区にある義眼などを製作する店で目玉を2組注文(1対7000円)、将来新たに阿形を製作するかも知れない。その時の用意のため2対!
  しかし家に帰って見て愕然、ガラスに細かい泡、しかも良く見ると表面が波立って部分がある。4枚のうちなんとか使えるのは1枚だけ。「なんだ?これは?」そこで電話をすると
「どうしてもガラスには泡がつく!」今時牛乳ビンだって泡はない。そして狛犬にはめられた目玉を注意深くみたが、どこにも泡がない!正直、職人を尊敬してただけにガックリした。職人は仕事のクオリティが命じゃないのか?そして少し腹が立った。
   
(分かりにくいが表面に泡!実は一番泡が多いのは落として壊してしまった)

 

彫刻師VS義眼師の「泡議論」 13年3月

義眼師は「泡は目玉を描くと何の影響もない!」
彫刻師が「泡部分はガラスの屈折が違うので目玉を描くと更に目立つ!」

 と真っ向から意見が対立。素人の私にはどっちが正しいか分からない。しかし泡のついた波だったレンズを作って「..なんの影響もない!」
 そんなの無責任な開き直りだ。こんな泡だらけのレンズ、第一狛犬が喜ばない。これなら今のヒビの入ったレンズを少し目立たないようにした方がはるかにましだ。そして友人栗田氏は、「素人でなめられたので?」と言った。そうかも知れない。

 

作り直した2組のレンズには泡なし!なにそれ? 4月

そこで新たに2組のレンズを注文。向こうは金入らないと言った。これは、この世界のル0ルのようだが、イヤだ!払う。絶対払う。そして受け取ったレンズ、4枚とも良く見たが泡がない。やれば出来るんじゃないか?まるでこれじゃ最初に素人の私は甘く見られて粗悪品を渡されたのか?と勘繰りたくもなる。とにかくこれで狛犬の目玉は修理できる。

(狛犬の中はごらんの通り空洞)

 

顔だけ狛犬はこうリメイクされるぞ! 13年4月

 狛犬はこの点が変更される。
【1】目玉が割れてるのはひとつだが、バランス上2つとも新しくする
【2】
目の周りを削ってガラスをはめ、再び目の廻りを被い金箔をつける。
【3】顔全体をもう少し厚みをつける。
【4】黒漆塗り金箔縁取りの楕円形の台をつける。
【5】台の裏に友人栗田氏に碑文を入れてもらう。
【6】鼻の頭のハゲた部分に漆をぬる
【7】これを友人価格でやってもらう。

(台から外し、紙を切って台の大きさを決めてるところ..こんなやり方で良いのかね?)

 檜の台は楕円形の黒漆しになる予定!

 

本当はこの狛犬の顔だった    4月

 友人の栗田氏から写真が送られてきた。かって修理し顔を彫り直した狛犬だ。つまりこの狛犬の元々の顔が、「顔だけ狛犬」なのだ。しかし全然違う顔になっている。しかし顔だけ狛犬は今のこの狛犬の顔に戻りたがっているのだろうか?
(これが顔が新しくなった狛犬・・この元の顔が、顔だけ狛犬、しかし全然別な狛犬になってるね)

 

遂に完成....しかし機嫌が悪い! 8

友人栗田氏に送って3月、遂に顔だけ狛犬が送られてきた。そして見た。うん?どうも相変わらず恐い顔だ。しかも下の漆の台とサイズも上手く合っていない。..誰が決めた?あっ、俺だ!しかも下げるヒモが見えるし、碑文も書いてない。いやそれより、なにより顔だけ狛犬の機嫌が悪い。こうなることを全然喜んでいないのだ。
「狛犬の俺がなぜ顔だけになってこんな姿をしてなきゃいけないんだ?」

そういってるように見える。いやあ、参ったなあ。正直ガックリした。いろいろやったが当の狛犬が喜んでいなかったとは。
【どうも面白くなさそうな顔だけ狛犬】

 

顔だけ狛犬再度修理!Ver2.0へ・・・8月

 今回の修整は
【1】台の前面のヒモは取り、その穴を塞ぎ、漆をぬる
【2】彫り師栗田氏の碑文を入れること。

 

Ver2.0完成。碑文はこれ! 8月

(人柄が滲み出るような書体がいい)
 前回とさほど変わった分けではないが、今回は良い。なにより顔だけ狛犬の顔が、少しおだやかな顔になった。尚台の裏に栗田氏が彫った碑文は以下の通り

昭和四六年三月
名古屋大須三宝大荒神天寧寺
狛犬阿形新造吽形修理
顔を造り変える
平成十二年秋 元の顔を修理し、
三遊亭円丈師匠に贈る

   彫師 栗田 剛

 

壁に掛けると部屋の空気ビ〜〜ンと変わった 8月
 とにかく居間に掛けた。ビ〜〜ン!部屋の空気が張り詰めた。部屋中にこの狛犬のオーラが溢れる。多分、泥棒が入って来ても逃げ出すような緊張感がある。部屋で寝転がってひょいと狛犬を見るとその鋭さに思わず正座してしまうような存在感がある。しかも食事の時は。お膳に座って見ると視線が合う。恐い!見ろ降ろされると恐いよ。

(元々の狛犬の色について:この狛犬の元々の色は、基本的に顔、体は全て金色。マユ、ヒゲ、タケガミが黒。口の周りが赤!)

 

先代ロッキーが阿になってしまった 8月
     
 (顔だけ狛犬が吽、先代ロッキーが阿。これで1対!ホント?)
 毎日に顔だけ狛犬を見て、この狛犬に触れているうちにまあ、見慣れたせいもあるだろうが、表情がだんだんと穏やかになって来た。とにかくこうして毎日、つきあってると更にやさしい顔になるだろう。とりあえずしばらくは様子を見よう。


顔だけ狛犬は、ホントに幸せになったのか?それは分からないが、とにかくこの「顔だけ狛犬を救え!」とりあえずめでたし、めでたし! ◎レポート第1弾はココ


【彫刻師】栗田剛プロフィール
 昭和19年7月19日名古屋生まれ。瑞陵高校後、三重大学教育学部美術科を卒業後、デザイン関係の会社に一年在職の後、栗田家3代目彫刻師父栗田三郎に師事し、仏像関係を中心に木彫の幅広い仕事をこなす。


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