最新版韓国狛犬
中国の狛犬に続き、今回は韓国編。そもそも日本のコマイヌとは、高麗(こま)
の犬で韓国経由で渡ってきたのではないかと言われてるほど日本のとの結び付き
が強いようだ。その韓国レポ−ト。
町 田 茂
慶州掛陵の狛犬
韓国の代表的な狛犬として、先ず一番最初に紹介しなければならないのは、慶州
掛陵の狛犬であろう。掛陵は8世紀末の元聖王の御陵で、新羅統一時代の陵墓
制度が、完備した時代の代表的な陵とされている。参道の両側には武人・文人像
と並んで狛犬が二対置かれている。特に武人像が見事な彫刻で表情が素晴らしい。
(慶州掛陵の全景)
これが慶州掛陵の狛犬
韓国には、より日本の狛犬の形に近いもの
が見られる。この狛犬もやや小太りで胸を張
って座った形は非常に日本的で親しみを感じ
る。人の背丈と同じ位の大きなものが二対あ
る。
これは或いは韓国の狛犬の特徴と言って
も良いのかと思うが、どうも二匹で一対ではな
くて四匹で一組になっているのが定型のようだ。
しかも夫々形式の異なる二対の狛犬が
一組となっているようだ。掛陵の狛犬も二種類
の狛犬が四匹置かれている。
慶州芬皇寺
この塔は634年善徳女王の
時代に建てられたもので、磚
塔(瓦の塔)様式の三国統一
以前に造られた唯一の新羅
石塔で、国宝に指定されている。
豊臣秀吉の侵攻(文禄の役)
の戦戦禍に会い、今は三層しか
ないが当時は高さ18mにも達す
る九層の石塔であったそうであ
る。 基壇四隅に獅子が置かれ
ている。石の扉には仁王像が
彫られている。
(慶州の芬皇寺)
これが芬皇寺狛犬
この狛犬は、胸を張り前肢を立てて座す像が二躯と、上体を前のめりにしてアザラシが
ごろごろ転がったような情けない形のもの二躯から成る。つまり前述のように形式の異
なる二組の狛犬四匹が、基壇の四隅に配置されているのである。年代ははっきりしない
が、塔の造立と同時に造られたものと思われている。
(芬皇寺の狛犬)
仏国寺多宝塔の狛犬
新羅第35代景徳王10年(751)に建立され
たこの塔は、東洋の石塔の中でも最も秀で
た傑作の一つで、百済の石工が木造建築の
様式を石で造ったもので、後世においてその
模型塔すら造れなかったと言われている。
(国宝の指定)
塔の高さは10mで、方形基盤の上に中央と
四隅に方形石柱を立て、その上に八角形の
三層の塔が乗っている。繊細な彫刻が施され、優美なデザインだ。
(仏国寺多宝塔全景)
これが多宝塔の狛犬
多宝塔一段目の塔の入口にあたる部分
に獅子が配置されている。話によれば、以
前は塔の周囲に四躯の獅子があったとされ
ているが、現在は一躯のみである。しかしこ
こにも獅子は四体との形が残っていた。
口を開いて前肢を立て、胸を張った姿は
日本の阿形の狛犬と同形とみた。仏像の
蓮華座と同じような台の上に座っているが、
模様から見ると蓮華座とも違うようだ。
(仏国寺多宝塔の狛犬)
全羅南道華厳寺四獅子三層石塔華巌寺には四獅子像に支えられた特殊な 形式の石塔がある。「四郷子三層石塔」と言い、舎利塔である。 製作年代は仏国寺と同じく景徳王 (742〜764) の時代であると言われている。前肢を真っ直ぐに伸ばした四体の獅子が 座り、その中央に比丘姿の石像が一体 あり、五体で舎利塔を支えている。華巌寺にはもう一基獅子四体が支えて いる塔がある。こちらはやや造りが劣るが、それでも 形としては中々面白い。
国立慶州博物館慶州博物館の前庭に色々な石仏と一緒に 狛犬が展示されており、年代の表示はない が古様を思わせる立派なものである。館内に統一新羅9〜10世紀のものとされる 石獅子が展示されていたが (撮影禁止)庭に展示されているものも姿形からみると 同時代のもののようである。(慶州博物館の狛犬)
ソウル光化門の狛犬
景福宮の正門が光化門だが、
すこし前までは光化門と景福宮
の間に国立中央博物館(旧朝鮮
総督府)があったが、最近取り壊
されたと聞いている。その光化門の前に写真のような
近代の狛犬が左右一対建っている。韓国の大きな建物の前には、立派
な狛犬が置かれている例が多いよう
に思われた。例えば伝統工芸館と言
ったような近代的なビルの前にも
大きな狛犬が一対置かれている。北は板門店から、南は釜山までバス
で旅行したことがあったが、韓国では
村の入口や橋の袂に狛犬が置かれて
いることが多かったように見受けた。村に悪霊が入って来るのを防ぐ意味が
あったのだろうか。
(光化門前の狛犬)
日本で見られる中国の狛犬
靖国神社の参道に少し変わった狛犬がある
ことに気づいただろうか。それもその筈、これは日清戦争の時に遼東
から捕獲して来たと言う、歴とした中国の
狛犬である。台石に大清光雌年閏五月初六日敢立と
ある。当時これを運んで来るには、軍役夫
中より獅子運搬組を特別に編成し、新しく
堅固な車を造り、各個分離して運搬したとか。
岐阜県下呂町にある狛犬博物館には、中国
狛犬が多数展示されている。石造のものは
少なく、陶製、木製のものが多く見られる。
(東京靖国神社の狛犬)
韓国編END
>